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世界最大ドイツ海事総合展、拡大し続けられる理由

SMM運営責任者のゼルバッハ氏に聞く
世界最大ドイツ海事総合展、拡大し続けられる理由

第28回となる「SMM2018」(9月4-7日開催)。「世界66カ国・2200社以上の出展と、120カ国・5万人以上の来場見込みで過去最大規模になる」とゼルバッハ氏

 世界的に造船不況と言われる中、ドイツ・ハンブルクメッセで開催される海事産業の国際総合展示会「SMM」が規模拡大を続けている。28回目となる「SMM2018」(9月4-7日開催)は世界66カ国・2200社以上の出展と、120カ国・5万人以上の来場者と過去最大規模を見込む。運営にあたるのはハンブルク見本市会社。来日した同社ビジネス部門長のクラウス・ウールリッヒ・ゼルバッハ氏に、展示会から見える海事業界の動向を聞いた。

展示面積9万㎡、海事業界最大


 -造船業界は厳しい経営環境にありながら、SMMは規模を拡大しています。
 「SMMでメッセ会場が満杯になったのは2010年から。その後は仮設ホールなどで展示面積を増やしてきた。今回は13ホール、展示面積9万平方メートルになる。拡大できているのは、海事産業界でSMMがナンバーワンの展示会と認識されたからだろう。どの企業もコスト削減を意識する中で、マーケティング費をかけるのならば、効果的な場所に集中しようとしているためだ」

 -効果的にするためにどのような工夫をしていますか。
 「市場の声を良く聞き、求めるソリューション(問題解決策)を必ず提供するように努力している。バラスト水規制や排気ガスの硫黄酸化物(SOx)排出規制などのクリーンシッピングは当面の課題で、SMMで対策の技術提案が見える。さまざまなデジタル化やそのセキュリティー、船舶のランニングコスト低減などあらゆる分野の最新技術、ソリューションがある。世界中のプレーヤーが出展しているからだ。しかも各社とも経営トップから国際営業チームがブースにおり、すぐに商談ができる」

来場目的別の回遊ルートをスマホに


 -来場者向けのユニークな取り組みも多いと聞きます。
 「来場者が効率的にソリューションを得られるように、テーマ別回遊ルートを設け、スマートフォンなどですぐに見られる。クルーズ&フェリー、グリーン、デジタル、セキュリティー、ジョブの5ルートがある。最新のジョブルートは若い世代の来場者を増やそうと考えたもの。出展企業が採用情報を出し、ブースで面接も受けられる。造船産業の次世代を育てようとの考えもある」

 -中国勢の台頭で日本の造船産業も厳しくなっています。
 「中国はSMMに四つのナショナルパビリオンを出すなど、その勢いは出展にも現れている。日本も日本舶用工業会、日本船舶輸出組合がパビリオンを出す。日本には大規模でなくても有力な造船所は多い。もっとSMMを世界市場との窓口として活用してもらいたい」
(聞き手と文・武田則秋)
日刊工業新聞2018年4月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
撮影要員で取材に同行しました。 出展者、来場者双方のニーズ充足を徹底的に追求している企業でした。 印象的だった話は、例えば来場者が造りたい船を専用アプリに入力すると、それに関わる様々な業者が出展者からピックアップされるというサービスについてです。 「効果的・効率的なマッチング」に加え、アイデアがどんどん具現化していくプロセスにワクワク感があります。 日本の展示会ビジネスが参考にできそうな取り組みやアイデアをたくさん持っているようです。

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