METI
伸びるフィットネス、落ち込むボウリング。スポーツ施設産業で明暗
スポーツビジネスには、スポーツ興行とは別に、スポーツ施設提供業がある。プロスポーツで利用される大規模施設以外で、民営施設となるとゴルフ場などが代表例となる。
サービス産業(第3次産業)活動指数では、民営のスポーツ施設のビジネスについての指数も作成している。そのスポーツ施設提供業活動指数では、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ボウリング場、そしてフィットネスクラブの活動状況を集計している。
今回は、それぞれ特徴的な動きを見せているボウリング場とフィットネスクラブの動きの比較を通じて、スポーツに対する意識の変化を読み解く試みをしてみようと思う。
まず、ボウリング場が大きく指数値を下げており、平成17年の135.6から28年の70.8と、この10年間でほぼ半減している。それとは対照的に、フィットネスクラブはほぼ右肩上がりで順調に増加している。活動指数の動きと同様に、両施設の10年間の事業所数をみると、対照的な動きとなっている。
こういった両施設の動きの違いは、何によって生じているのだろうか?
まずは年間を通した利用者の動向だ。冬のスキーや夏の水泳といった気候に依存するスポーツと違い、ボウリング場、フィットネスクラブともに施設内で行うことから、特定の季節に偏らず年中いつでも行いそうなイメージがある。しかし、施設利用者の動向をみると、季節による繁忙期と閑散期が存在し、その動きが両者で大きく異なっていた。
それぞれの利用者数を指数化している第3次産業活動指数を用いて、季節変動パターンを抽出してみると、次のグラフのようになる。
フィットネスクラブにも7月、10月がピークで12月に最低になるという動きはあるが、ピークとボトムの差は10ポイント程度でボウリング場に比べると増減の幅は比較的緩やかだ。
一方のボウリング場は、1、3月に大きなピークが、次いで8月にやや大きいピークがあり、6、7月、そして9月から11月にかけ利用者数が年間でもっとも低くなることが分かる。
ピークとボトムの差はフィットネスクラブに比べると大きく、実に40ポイント、つまり繁忙期と閑散期とで利用客が4割も変わることになる。また、毎月の動向でも、増えた翌月は減るなど変動が大きくなっている。
「利用者数が安定している」フィットネスクラブと、「利用者の繁閑の差が大きい」ボウリング場と言えるだろう。
次に、年代別のプレイ人数の10年間の変化を見てみる。
ボウリング場では10年前(平成18年)に比べ、60代以上は増加しているが、若年層が大きく減少している。また、10年前の20代と今の30代のようにかつてプレイしていた年代のうち今もプレイした人の割合をみると、どの年代も40~60%の減少となっている。
一方のフィットネスについては、もっとも近いと思われる「機具を使ったトレーニングを行った者」の人数を確認してみる。こちらも20代、30代こそ10年前と比べ減少しているが、それ以外では増加している。
かつて行っていた者の変化についても、10年前の20代、つまり今の30代を除き、各年代とも10年前にはやっていなかった人がこの行動を始めていることも確認できる。とくに高齢者になるほど新たに始める人の割合が増加する。
「若い人、40台以下が中心で、年を重ねるとプレイから離れてしまう」ボウリングと、「年を重ねると新たに始める人が増え、40台以上が中心」のフィットネスクラブ(器具を利用する運動)とで、利用者層の特徴がはっきりと見えてくる。
ここまでのデータから、冬休みや春休みの時期に盛り上がる若い人が利用者の中心となっているボウリング場の特徴を見いだすことができる。また、ボウリングは年を重ねるごとに、競技から離れていく傾向にある。
他方、高齢者層が利用者、行動者の中心で、年間を通してあまり利用者数に変化がないというフィットネスクラブの特徴を見いだすことができる。そして、年齢を重ねると、新たに始める人が増えるという特徴もある。
スポーツの実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁)によれば、運動・スポーツを行った最も大きな理由は、「健康のため」となっている。スポーツというと勝負事、ゲームで勝敗や記録を「競う」ものという側面もあるが、昨今では、健康増進ということが大きな、そして伸びていく行動動機になっている。
このあたりが、二大スポーツ施設であるフィットネスクラブとボウリング場の活動指数の対照的な動きの背景にあるのではないかと推測できる。
サービス関連産業の動きの背景を探ってみるのは、面白いと思いませんか、皆さん。
サービス産業(第3次産業)活動指数では、民営のスポーツ施設のビジネスについての指数も作成している。そのスポーツ施設提供業活動指数では、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ボウリング場、そしてフィットネスクラブの活動状況を集計している。
今回は、それぞれ特徴的な動きを見せているボウリング場とフィットネスクラブの動きの比較を通じて、スポーツに対する意識の変化を読み解く試みをしてみようと思う。
まず、ボウリング場が大きく指数値を下げており、平成17年の135.6から28年の70.8と、この10年間でほぼ半減している。それとは対照的に、フィットネスクラブはほぼ右肩上がりで順調に増加している。活動指数の動きと同様に、両施設の10年間の事業所数をみると、対照的な動きとなっている。
こういった両施設の動きの違いは、何によって生じているのだろうか?
初夏と秋に利用者が低迷するボウリング
まずは年間を通した利用者の動向だ。冬のスキーや夏の水泳といった気候に依存するスポーツと違い、ボウリング場、フィットネスクラブともに施設内で行うことから、特定の季節に偏らず年中いつでも行いそうなイメージがある。しかし、施設利用者の動向をみると、季節による繁忙期と閑散期が存在し、その動きが両者で大きく異なっていた。
それぞれの利用者数を指数化している第3次産業活動指数を用いて、季節変動パターンを抽出してみると、次のグラフのようになる。
フィットネスクラブにも7月、10月がピークで12月に最低になるという動きはあるが、ピークとボトムの差は10ポイント程度でボウリング場に比べると増減の幅は比較的緩やかだ。
一方のボウリング場は、1、3月に大きなピークが、次いで8月にやや大きいピークがあり、6、7月、そして9月から11月にかけ利用者数が年間でもっとも低くなることが分かる。
ピークとボトムの差はフィットネスクラブに比べると大きく、実に40ポイント、つまり繁忙期と閑散期とで利用客が4割も変わることになる。また、毎月の動向でも、増えた翌月は減るなど変動が大きくなっている。
「利用者数が安定している」フィットネスクラブと、「利用者の繁閑の差が大きい」ボウリング場と言えるだろう。
プレイする者の年齢構成
次に、年代別のプレイ人数の10年間の変化を見てみる。
ボウリング場では10年前(平成18年)に比べ、60代以上は増加しているが、若年層が大きく減少している。また、10年前の20代と今の30代のようにかつてプレイしていた年代のうち今もプレイした人の割合をみると、どの年代も40~60%の減少となっている。
一方のフィットネスについては、もっとも近いと思われる「機具を使ったトレーニングを行った者」の人数を確認してみる。こちらも20代、30代こそ10年前と比べ減少しているが、それ以外では増加している。
かつて行っていた者の変化についても、10年前の20代、つまり今の30代を除き、各年代とも10年前にはやっていなかった人がこの行動を始めていることも確認できる。とくに高齢者になるほど新たに始める人の割合が増加する。
「若い人、40台以下が中心で、年を重ねるとプレイから離れてしまう」ボウリングと、「年を重ねると新たに始める人が増え、40台以上が中心」のフィットネスクラブ(器具を利用する運動)とで、利用者層の特徴がはっきりと見えてくる。
利用者数の動きの違いについての仮説
ここまでのデータから、冬休みや春休みの時期に盛り上がる若い人が利用者の中心となっているボウリング場の特徴を見いだすことができる。また、ボウリングは年を重ねるごとに、競技から離れていく傾向にある。
他方、高齢者層が利用者、行動者の中心で、年間を通してあまり利用者数に変化がないというフィットネスクラブの特徴を見いだすことができる。そして、年齢を重ねると、新たに始める人が増えるという特徴もある。
スポーツの実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁)によれば、運動・スポーツを行った最も大きな理由は、「健康のため」となっている。スポーツというと勝負事、ゲームで勝敗や記録を「競う」ものという側面もあるが、昨今では、健康増進ということが大きな、そして伸びていく行動動機になっている。
このあたりが、二大スポーツ施設であるフィットネスクラブとボウリング場の活動指数の対照的な動きの背景にあるのではないかと推測できる。
サービス関連産業の動きの背景を探ってみるのは、面白いと思いませんか、皆さん。