ストレッチ素材、市場も伸び伸び!低迷繊維に“新星”

快適なカジュアルウエア、“お出かけ着”の定番に

 人の動きに合わせ伸び縮みする「ストレッチ素材」市場が拡大している。スポーツウエアやユニホーム、下着などに使われてきたストレッチ素材を取り入れ、動きやすさなどの快適性を訴求する衣料品が増えているためだ。これを商機とみる化学繊維メーカーの製品開発も加速し、伸縮性を持たせただけではなく、より付加価値をつける時代になった。“伸びる”需要を取り込もうとする日系メーカーの動きを探った。

 「伸びない生地はいらないよ。お客さんが興味ないので売れないから」―。ある大手化学繊維メーカーの開発担当者は、ここ1、2年、販売先からこんな言葉をかけられることが急に増えたと明かす。

 販売先とは衣料品を開発・生産するアパレルメーカーやスポーツブランドなどで、急成長する製造直販型小売業(SPA)も同様の傾向が顕著だという。

 この開発担当者は「もともと伸縮性のある素材への引き合いはあった。ただ、これほど認知度が向上し、ここまで需要が増えるとは思わなかった」と驚いた表情をみせる。

 同時に“冬の時代”と言われて久しい繊維業界に訪れた新たな商機に、大きな期待を募らせているようだ。

20年に出荷額は200億円超え


 ストレッチ素材の引き合いが増えている背景には、消費者の嗜好(しこう)の変化で新たなニーズが生まれていることがある。例えば休日のおしゃれ着。堅苦しいフォーマルウエアの人気が落ち、動きやすく快適なカジュアルウエアが“お出かけ着”の定番となり、スポーツウエアを普段使いする人も増えた。

 スーツやシャツといったビジネスウエアでも「動きやすさ」などの機能性を重視する消費者が増えている。活動的に余暇を過ごしたいシニア世代にもこの動きは広まっている。

 このトレンドを商機と捉え、もともとストッキングや下着、ユニホームなど伸縮性が必要な衣類に広く使われてきたストレッチ素材使用の商品をアパレルメーカーやSPAなどが拡充。市場が拡大している。

 市場調査会社の富士経済(東京中央区)によると、2016年の日系化学繊維メーカー(一部海外メーカー)の、スポーツやレジャー衣料用途におけるストレッチ素材(生地・繊維)の出荷額は前年比5・1%増の185億円。この先も年率5%程度の成長が続く見通しで、20年の出荷額は226億円に拡大すると予想する。

 ストレッチ素材は、カジュアルやビジネスウエア、ストッキングや機能性インナーなど幅広い衣料品に使われており、メーカーが抱える売り上げ規模は同社推計の100倍程度に上ると見られる。

 伸縮性を持たせた衣料品展開を強化するのはスポーツやファッションブランドだ。これらの会社は消費低迷や少子化で長期に渡り衣料品売上高が伸び悩む中、事業の安定継続には一定量の衣料品を定期購入する優良な顧客層に訴求力ある製品を提供し続ける必要がある。

 スポーツ用品大手のヨネックスは「現在、個人消費者への販売強化にあたり“大人”が満足するこだわったウエア開発を進めている。そこで注目したのがストレッチ素材。今後も製品拡充にあたり積極採用を続ける」(同社ウエア開発部)と明確な方針を話す。

 小売り大手も衣料品に快適性を求める動きを商機と捉える。カジュアル衣料大手のしまむらの北島常好社長は「伸縮性のある服を要望する声は多い。今後もお客のニーズを満たす製品を幅広くそろえたい」と意欲的だ。
                

さらなる機能、伸縮性プラス独自性


 日本の化学繊維業界は中国など新興国の技術高度化や生産拡大にさらされ、国内を中心に事業縮小を迫られてきた。その中でストレッチ素材は、日本メーカーが他国勢をリードし、力を入れている分野だ。市場拡大が続く中で、独自色を出そうと従来の伸縮性にさらなる機能を追加する動きが目立つ。

 最大手の東レが展開するのは高いストレッチ性を特徴とする生地ブランド「プライムフレックス」。15年のブランド設立に合わせ開発したナイロン生地は、異なる2種類のポリマーを貼り合わせた「バイメタル構造繊維」を使用。体にしなやかに追従する柔らかなストレッチ性が最大の売りだ。

 さらに植物由来成分を原料の一部に使用し、アパレル業界で意識が高まる“環境配慮”も訴求。長期的に投資を続け「同ブランドを将来の看板商品に育成する」方針だ。

 日本の厳しい冬に合わせ、“熱”に着目した商品も増えてる。帝人は17年、蓄熱や保温機能を持たせたポリエステル繊維を開発した。

 ポリトリメチレンテレフタレート繊維の分子構造に特殊なカーボン微粒子を入れ、太陽光の近赤外線を効率的に熱に変換。「従来のポリエステル繊維に比べ、体感温度が約5度高くなる」(帝人フロンティアの日光信二社長)と、冬用のアウターなどに売り込む。

 旭化成が力を入れるのは人が動くと発熱するユニークな生地だ。汗などの水蒸気を吸収すると発熱する製品と違い、特殊設計のポリウレタン生地が関節などの伸縮に合わせ伸びる際に、独自技術で熱を発生する。同社は「運動時に生地の表面温度が上がるので、冬用スポーツウエアに最適」とPRする。
 
 高い質感を持たせた製品も人気を集める。ユニチカのポリエステル生地「Z―10」は異なる2種類のポリマーを複合紡糸した繊維が原料で、加工中の熱で繊維が縮む捲縮が発生。高いストレッチ性と同時に、生地に自然なひだが表れる「ドレープ性」を持たせた。「女性用のおしゃれ着に使うと上質な仕立てになる」と話す。
             

(文=小野里裕一)

日刊工業新聞2018年4月3日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
04月04日
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 ストレッチ素材を大別すると、伸縮性のある繊維を生地に加工したものと、繊維自体はあまり伸びないが編み方で生地に伸縮性を持たせたものの2種類に分けられる。
 伸縮性のある繊維は1959年に米デュポンが開発したポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)が代表製品で、日本では化学繊維最大手の東レが「ライクラ」、旭化成が「ロイカ」の商標で展開している。水着やインナーなどに使用され、ストレッチ素材市場における構成比は30%程度となっている。
 一方、スポーツやカジュアルウエアなどに広く使われるのはポリエステルやナイロンなどの化学繊維を独自に編んで伸縮性を持たせた生地で、構成比は約70%と大部分を占める。
(日刊工業新聞経済部・小野里裕一)

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