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トヨタなどが目指す「FCV経済圏」、じわり仲間増える

水素協議会に11社新たに参画、約40社体制に
 トヨタ自動車やホンダ、独ダイムラー、仏エア・リキードなどが2017年1月に設立した「水素協議会」が存在感を高めている。韓国政府に働きかけて水素ステーションの整備促進に結びつけたほか、独ロバート・ボッシュなど11社が新たに参画して約40社体制に拡大した。活動や組織を充実させ、燃料電池車(FCV)の普及など水素社会実現に向けた取り組みを積極化する。

 水素協議会は地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の実現に向け、17年1月に輸送機器メーカーやエネルギー大手などのグローバル企業13社で発足した。低炭素社会への移行を目指し、水素をエネルギーとして利用する機運を高めている。

 韓国政府には水素活用の有用性を訴え、韓国では22年までに水素ステーションを310カ所に整備・拡充することが決まった。エア・リキードとともに共同議長を務める韓国の現代自動車は、2月に新型FCV「NEXO」をベース車両にした自動運転の試験走行を現地で実施してPRするなど、水素社会の構築に力を入れている。

 韓国について水素協議会の日本の関係者は「(日本企業の)市場としてはあまり考えていないが、FCVの市場形成に協力していく」という。水素社会の象徴ともいえるFCVの普及にはインフラ整備が不可欠なため、グローバルに働きかけを継続する意向だ。

 発足から1年以上が経過した水素協議会は組織の拡大も急ピッチで進む。発足時は13社だったが、17年中に賛助会員も含めて28社まで増加し、3月にはボッシュや米3M、JXTGエネルギー、丸紅などが加わって合計39社に達した。共同議長のエア・リキードのブノワ・ポチエ会長兼最高経営責任者(CEO)は「水素導入に努力するリーディングカンパニーが世界中で増えることを喜ばしく思う」とコメントしている。

 KPMGインターナショナルが実施した「2018年グローバル自動車業界調査」によると、25年までの主要トレンドで「FCV」が17年調査に比べ5ポイント上昇してトップに立ち、自動車関連企業の幹部の52%が「極めて重要」と答えた。2位は「コネクテッドカー技術」、3位が「電気自動車(EV)」で、FCVへの注目度の高さを示した。
(文=名古屋・今村博之)
日刊工業新聞2018年4月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「究極のエコカー」として14年12月にFCVを世界で初めて市販したトヨタも、FCVの普及は長期戦を覚悟の上で取り組んでいる。「FCV経済圏」を構築するには各国の関連企業や政府をどこまで巻き込めるかがポイントとなる。 (日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

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