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中小企業の社員「IoTの使い方分かってきた」

大分県のIoT人材育成
中小企業の社員「IoTの使い方分かってきた」

市販のキットを使い、総額1万円以下でデータの収集・確認が可能になった(古山乳業での現場研修)

 大分県産業創造機構(大分市)が2017年度に実施してきた製造業向けIoT(モノのインターネット)人材の育成研修を終えた。参加者は大半がIoTの導入実現に至ってない中小企業の社員。“身の丈に合ったIoTの導入推進”を掲げた研修は、どのような成果を生んだのか。探った。

 同機構によると、研修開始当初の大分県内の製造現場でのセンサー情報活用割合は1・8%。「気にはなるが導入コストが心配」「日々の操作が難しそう」などの声が多かったという。そこで、まずはIoT導入推進の中核となる人材を育成すべきだとの考えから、研修をスタートした。

 1期生は21社22人。県内外の先進企業の事例紹介や視察、IoT基礎知識の習得とセンサーを使った勉強会などを重ねた。17年末からはA、Bの2班に分かれ、参加企業で実際に問題となっている事例を抽出し、講義で学んだ手法を用いる現場研修を行った。

 三和酒類(大分県宇佐市)が所属するAグループは、同社の焼酎製造工程における発酵タンク内に温度把握のためのセンサーと、アラーム機能を備えることに取り組んだ。

 「温度の異常で夜中の3時に呼び出されたこともある」と研修に参加した同社製造部の原田武弘さんは打ち明ける。センサーが取得したデータを遠隔で監視し、共有できる環境を今回の研修で実現。温度異常が発生する前の状況が把握できることで、発酵の管理に役立つという。

 Bグループの研修の舞台となった古山乳業(大分市)の古山信介社長は「社員から研修テーマ以外のことについても改善提案が出てきた」と思わぬ効果に喜ぶ。

 いずれの現場でも市販の数千円のセンサーキットを使い、総額1万円以下でデータ収集と社内ネットワークによるデータ確認が可能になった。

 本格的なシステムの運用に向けては課題もある。だが「参加者からは『IoTをどう使っていくか、手段や手法が見えてきた』との声が多かった」(同機構)という。18年度は研修事業と現場導入専門家の派遣を行いながら、企業の具体的課題の解決に向けた取り組みを計画している。
(文・宗健一郎)
日刊工業新聞2018年4月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
私がIoTという言葉を最初に耳にしたのはビッグサイトでの講演。大きな会場で大手IT企業の幹部がコンセプチュアルに語っておられました。あっという間に中小企業の社員さんたちが取り組む「現場」のツールになっていることに、社会変化のスピードを感じます。

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