疾走するロボットタクシーの風雲児「ZMP」はどこまで突き進むのか
ロボタク「2025年には10万台」へ。乗客向けの無人運転、多くのパートナーを引き寄せる
巨大企業も取り組む自動運転技術で、従業員100人にも満たないベンチャー企業が注目を集めている。2001年創業のZMP(東京都文京区)だ。最近ではディー・エヌ・エー(DeNA)と共同出資会社「ロボットタクシー」を立ち上げ、20年に無人タクシーを実現すると宣言して世間を驚かせた。活躍の場は建設機械や農業機械、物流へ広がり、そして近く空への進出を目指す。
【潮目変化で現実味−多くのパートナー引き寄せる】
「20年の東京オリンピック・パラリンピックに来た海外の人が『ロボタク(ロボットタクシー)がいるね』と思える規模として3000台を目指したい。それができれば、25年には10万台ぐらいに届くのではないか」。
ZMPの谷口恒社長は、自動運転車の展望を語り出したら止まらない。選手村や東京駅、羽田空港などでロボタクが観光客らを迎える。さらに車内のディスプレーで国内観光地を紹介し、選択すれば交通手段やホテルを表示して旅行もできるといった具合だ。
運転者のいない車は現在認められていないが、潮目は変わりつつある。自動のハンドル操作について規制見直しの議論が始まり、運転席に人が座った状態での公道走行実験はZMPを含めた複数の企業が実施している。規制や技術の仕上がりで時期や場所が変わるとしても現実味は強い。
東京オリンピック・パラリンピックまでに実現すれば、体験した人々が自国で広げたいと手を上げる可能性はある。「当社とDeNAの2社で全てできるとは思わない。フランチャイズ展開し、ロボタク社はサーバー管理を担うことも考えられる」(谷口社長)。
むしろ最終的な狙いは、高齢化地域や観光地、駅からのラスト・ワンマイル問題など、それぞれに最適な自動運転サービスを提供するエコシステム化のようだ。「鉄道業界にはぜひ参加してほしい」(同)と秋波を送る。
【自律移動、15年磨く】
ZMPは自動運転などで、米インテルやコマツ、ソニー、DeNAなどさまざまな企業と提携し、いわばモテモテの状態だ。企業規模は小さいながら、専門家集団として他社の開発支援をできる技術力を持つからだ。これまでも多くの企業や研究機関に自動運転開発支援サービスを提供し、裏方として自動運転車を支えてきた。
数ある自動運転関連技術の中でも強みは、対象との距離を測るセンサーやカメラを使って地図のようなものをつくり、自車の位置を高精度に推定して自律移動する技術。これは創業時の二足歩行ロボットや、次の音楽ロボットにも自律移動技術は共通して使われ、15年磨いてきた。
“乗客向けの無人運転”を目指すことも、多くのパートナーを引き寄せる理由だ。人の本質的な喜びは移動の自由という考えは完成車メーカーと同じだが、「無人運転は高齢者が年齢によって奪われる喜びを取り返すことができる」(同)。
【新たな価値生む−あらゆるものに「ロボ技術」応用】
ZMPが本格的にあらゆるものにロボット技術を応用する方向へ変わり始めたのは14年1月から。建機ではコマツと組み、物流向けには台車をロボット化した「キャリロ」を開発した。荷物を運ぶ負担を軽減することに加え、空港でポーターにもなり得る。
また農作業をロボットが行えば、人は空いた時間をマーケティングに使えるため、農業が全く違ったビジネスになると期待する。
「今後はもっと広げる。次は空。新しい価値を生みたい」(谷口社長)と意気込む。近いうちに空の自動運転プロジェクトも明らかにする予定だ。さらに1年前からは人体内の自動運転に向けて個人的なリサーチも始めた。病気の芽を見つけられれば、医療費の軽減になる。「生きている時は元気に、ロボタクで好きなところに行って楽しく過ごしてほしい」(同)と語る。
社長が夢を語ることで、一緒にやりたい人材が集まる循環も生まれている。海外からも入社したいという連絡があり、「海外人材の比率を50%に留めるため、海外では(入社を)スタンバイしている人が多い」(同)。年内に全体で約20人程度増やしたいという。
19世紀の著名なSF作家のものとされる言葉に「人が想像できることは、必ず人が実現できる」があるが、同社の自動運転のビジョンはこの言葉を思い出さずにいられない。
【潮目変化で現実味−多くのパートナー引き寄せる】
「20年の東京オリンピック・パラリンピックに来た海外の人が『ロボタク(ロボットタクシー)がいるね』と思える規模として3000台を目指したい。それができれば、25年には10万台ぐらいに届くのではないか」。
ZMPの谷口恒社長は、自動運転車の展望を語り出したら止まらない。選手村や東京駅、羽田空港などでロボタクが観光客らを迎える。さらに車内のディスプレーで国内観光地を紹介し、選択すれば交通手段やホテルを表示して旅行もできるといった具合だ。
運転者のいない車は現在認められていないが、潮目は変わりつつある。自動のハンドル操作について規制見直しの議論が始まり、運転席に人が座った状態での公道走行実験はZMPを含めた複数の企業が実施している。規制や技術の仕上がりで時期や場所が変わるとしても現実味は強い。
東京オリンピック・パラリンピックまでに実現すれば、体験した人々が自国で広げたいと手を上げる可能性はある。「当社とDeNAの2社で全てできるとは思わない。フランチャイズ展開し、ロボタク社はサーバー管理を担うことも考えられる」(谷口社長)。
むしろ最終的な狙いは、高齢化地域や観光地、駅からのラスト・ワンマイル問題など、それぞれに最適な自動運転サービスを提供するエコシステム化のようだ。「鉄道業界にはぜひ参加してほしい」(同)と秋波を送る。
【自律移動、15年磨く】
ZMPは自動運転などで、米インテルやコマツ、ソニー、DeNAなどさまざまな企業と提携し、いわばモテモテの状態だ。企業規模は小さいながら、専門家集団として他社の開発支援をできる技術力を持つからだ。これまでも多くの企業や研究機関に自動運転開発支援サービスを提供し、裏方として自動運転車を支えてきた。
数ある自動運転関連技術の中でも強みは、対象との距離を測るセンサーやカメラを使って地図のようなものをつくり、自車の位置を高精度に推定して自律移動する技術。これは創業時の二足歩行ロボットや、次の音楽ロボットにも自律移動技術は共通して使われ、15年磨いてきた。
“乗客向けの無人運転”を目指すことも、多くのパートナーを引き寄せる理由だ。人の本質的な喜びは移動の自由という考えは完成車メーカーと同じだが、「無人運転は高齢者が年齢によって奪われる喜びを取り返すことができる」(同)。
【新たな価値生む−あらゆるものに「ロボ技術」応用】
ZMPが本格的にあらゆるものにロボット技術を応用する方向へ変わり始めたのは14年1月から。建機ではコマツと組み、物流向けには台車をロボット化した「キャリロ」を開発した。荷物を運ぶ負担を軽減することに加え、空港でポーターにもなり得る。
また農作業をロボットが行えば、人は空いた時間をマーケティングに使えるため、農業が全く違ったビジネスになると期待する。
「今後はもっと広げる。次は空。新しい価値を生みたい」(谷口社長)と意気込む。近いうちに空の自動運転プロジェクトも明らかにする予定だ。さらに1年前からは人体内の自動運転に向けて個人的なリサーチも始めた。病気の芽を見つけられれば、医療費の軽減になる。「生きている時は元気に、ロボタクで好きなところに行って楽しく過ごしてほしい」(同)と語る。
社長が夢を語ることで、一緒にやりたい人材が集まる循環も生まれている。海外からも入社したいという連絡があり、「海外人材の比率を50%に留めるため、海外では(入社を)スタンバイしている人が多い」(同)。年内に全体で約20人程度増やしたいという。
19世紀の著名なSF作家のものとされる言葉に「人が想像できることは、必ず人が実現できる」があるが、同社の自動運転のビジョンはこの言葉を思い出さずにいられない。
日刊工業新聞2015年07月06日最終面「快進撃のケーススタディー」