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コインチェック、466億円補償も顧客保護に課題残る

ビジネスモデルには、顧客を二の次とする姿勢
コインチェック、466億円補償も顧客保護に課題残る

業務改善命令を受け、会見するコインチェックの和田晃一良社長(左)

 金融庁に登録申請中の仮想通貨交換業者であるコインチェック(東京都渋谷区)が、約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」流出問題に対して顧客へ補償した。対象は流出が発覚した1月26日時点でネムを保有していた約26万人。同社の顧客口座の残高に、日本円で計約466億円を反映した。また、ネム以外の一部の仮想通貨の出金・売却も再開した。終結に向かっているとも見える流出問題だが、同社の顧客保護姿勢にはいまだ課題が残る。

 金融庁は8日、コインチェックに対して1月29日に続く2度目の業務改善命令を出した。「経営陣の顧客保護の認識が不十分なまま、業容拡大を優先させた」(金融庁)として、経営体制の抜本的な見直しや、経営戦略の見直しと顧客保護の徹底などの対応を求めている。

 処分を受けて同日、会見したコインチェックの大塚雄介取締役最高執行責任者(COO)は「顧客保護の観点から抜本的な経営体制の見直しを行い、顧客保護を徹底した経営戦略を行っていく」と意気込みを示した。業容拡大について大塚取締役は「2017年10月頃から、仮想通貨全体の価格が一気に急騰して顧客が増えた」とし、顧客対応に追われていたことを伺わせた。

 実際、今回初めて明らかにした同社が取り扱う全13仮想通貨の取引高(取引所と販売所の合計)は、17年7月の2868億円から12月は3兆8537億円と短期間で約13倍にも拡大した。累計口座(ウォレット)数は8日時点で170万口座もあった。

 同社では取引量の約8割が取引所でのもので、残りの2割程度が同社で仮想通貨を購入したり売却したりしている。ここからの手数料が同社の収益の源泉となっている。つまり同社は、他から仮想通貨を仕入れて販売所で顧客に売るか、あるいは顧客から買い上げて他で売り、このスプレッド(利ざや)で収益を成り立たせている。

 同社は国内で最大級の仮想通貨を取り扱っているが、さらに利用者を増やしスプレッドを稼ぐために、システムリスク管理態勢が不十分なままテレビCMを多用し顧客を獲得しようとしていた。そのビジネスモデルには、顧客を二の次とする姿勢が見え隠れする。
(文=山谷逸平)
日刊工業新聞2018年3月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
同社は22日までに金融庁に業務改善計画の提出を求められているが、顧客保護を最優先とする経営戦略の見直しを早急にすべきだ。 (日刊工業新聞経済部・山谷逸平)

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