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産総研がAI検証環境を整備、工場やコンビニなど再現

産総研がAI検証環境を整備、工場やコンビニなど再現

写真はイメージ(GE REPORTSより)

 産業技術総合研究所は、人工知能(AI)技術を工場や小売りなど、さまざまな産業の利用シーンで試す「テストベッド事業」を2018年度に始める。工作機械や半導体製造装置を配置した工場、コンビニなどを再現した環境を用意する。センサーやロボット、機械からデータを集め、AIで解析し、運用最適化する。産業界にとってはAIをビジネスに導入するためのデータ収集法やAIのアルゴリズム、計算負荷など検証できる。

 経済産業省の16年度2次補正予算から約150億円を投じ、臨海副都心センター(東京都江東区)と東京大学の柏IIキャンパスにテストベッドをそれぞれ整備する。

 臨海地域は工場や小売店、研究室などを再現する。工場では工作機械とロボットなどを連携させる。研究室では創薬などの実験作業をロボット化する。

 いずれも装置やセンサーからデータを収集し、品質管理をAIで高度化したり、各機器の制御にAIを応用したりして稼働率を向上させる。

 東大の柏拠点では、千葉県柏市や市民と連携して、人間の生体データや行動データを収集する。拠点で物体や人物の動きをデジタル化する「モーションキャプチャー」などの計測装置で精密なデータをとり、日常生活でウエアラブルセンサーからデータを集める。

 さらにウエアラブル端末から得た粗いデータを拠点での精密データで補強し、健康状態や運動管理などの高度なサービスに利用できるようにする。

 AIアルゴリズムの改良で低品質データが解析できると、センサーをより簡易化して事業が採算ラインにのるなど、産業界はAIの活用モデルを精査できる。設備投資に補正予算、研究活動費に産総研の内部予算や企業との共同研究予算を当てる。50社以上との共同研究を目指す。
                
日刊工業新聞2018年3月8日
川上景一
川上景一 Kawakami Keiichi JEITA 常務理事
 人工知能(AI)の社会実装を広げていくには、未だいろいろなハードルがある。目的を定め、必要なデータを準備して(経営課題を認識できて、統計学の知識も必要だ)、適切なAIのアルゴリズムを考え、それを動かす高性能の電子計算機を探して、使えるようにもしなければならない。多くの企業が抱えるこのような悩みをワンストップで解決できるように、産業技術総合研究所(産総研)が2018年度に「テストベッド事業」を始める。  「50社以上との共同研究を目指す」ということだ。産総研は、3月7日、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)と包括連携協定を締結し、スマート製造の実現に向けた連携・協力を推進していくことも発表した。多くの企業が産総研のテストベッドを活用して「AIが自分にも役立つ」ことを検証し、それがモデルとなってAIの社会実装が広がり、企業、更には社会が抱える課題の解決につながることを期待したい。

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