キリンが中国全土でミネラルウオーターを売りまくりたい理由
ブラジル巨大損失、ベトナム見送り。買収先に深くコミットし結果を
キリンホールディングスは2017年末、買収観測が流れていたベトナム国営ビール大手、サベコへの出資を見送った。外資規制で過半数の出資ができないことに加え、金額が約5000億円と高騰したのが理由だ。その前に、赤字が続いていたブラジルキリンを約770億円で売却。米国製薬大手アムジェンとの合弁解消の株式売却益もあり、手元資金は潤沢。今後は、次の“攻めの一手”が注目される。
「投資家から次の一手が注目されているのは理解している。このままじっとしているわけにはいかない」。海外事業の指揮を執る西村慶介副社長はこう語る。
だからと言って「最初にM&A(合併・買収)ありき」で海外案件を物色するわけではない。サベコ案件の決着で、グローバルなビール業界の大型再編はほぼ一巡したとみている。
「大型案件が出るとすれば、ビールよりむしろ飲料。こちらは国ごとにプレーヤーの数も多いし、市場も未成熟。キリンにもいくつか買収オファーがきている」と明かす。
キリンはブラジルから撤退したことで、海外展開先はミャンマーと豪州、フィリピン、中国、台湾などになった。同社の新興諸国の法人の業績はおおむね好調だ。
ミャンマー・ブルワリーは、同国でのビールシェアが約8割と圧倒的で、経済成長につれ売り上げが伸びている。17年に別企業のマンダレー・ブルワリーも子会社化し、広い国土に製品を供給していける体制が整った。
豪州のライオンは健康志向でビール消費が伸び悩んでいるが、高価格のクラフトビールやプレミアムビールは順調だという。
中国については、長江デルタと珠江デルタ地域で「一番搾り」の製造販売をはじめているほか、現地企業との合弁会社・華潤麒麟(きりん)飲料を通じて、飲料事業拡大を図っている。
華潤麒麟飲料の主力商品はミネラルウオーター「セボン」。中国では、飲料水の約4割をボトル水が占めるほど水を買う文化が根付いており、華東(長江デルタ)エリアを中心に内陸へも拡販を図る。中国国内に9工場と33件のOEM(相手先ブランド生産)工場を持ち、全土に製品を供給する体制が整っている。
中国市場は、豪州市場と同様「今後、クラフトビールが富裕層向けに伸びる」と西村副社長はみている。豪州ライオンが、香港とシンガポールに小規模醸造所を開設済みで、中国への販路も持つ。
この強みを生かして中国市場を攻略し、クラフトビール醸造所を上海にもつくるとともに、キリンのクラフトビールも売り込んでいく考えだ。
豪州や日本などの先進国市場と違い、新興国市場は高い成長の可能性があるとはいえ、政情や宗教対立、さらには税制、為替動向、流通などの面でのリスクがある。西村副社長は「国ごとに一つひとつ、中身をきっちり吟味していかないといけない」と語る。
(文=嶋田歩)
「投資家から次の一手が注目されているのは理解している。このままじっとしているわけにはいかない」。海外事業の指揮を執る西村慶介副社長はこう語る。
だからと言って「最初にM&A(合併・買収)ありき」で海外案件を物色するわけではない。サベコ案件の決着で、グローバルなビール業界の大型再編はほぼ一巡したとみている。
「大型案件が出るとすれば、ビールよりむしろ飲料。こちらは国ごとにプレーヤーの数も多いし、市場も未成熟。キリンにもいくつか買収オファーがきている」と明かす。
キリンはブラジルから撤退したことで、海外展開先はミャンマーと豪州、フィリピン、中国、台湾などになった。同社の新興諸国の法人の業績はおおむね好調だ。
ミャンマー・ブルワリーは、同国でのビールシェアが約8割と圧倒的で、経済成長につれ売り上げが伸びている。17年に別企業のマンダレー・ブルワリーも子会社化し、広い国土に製品を供給していける体制が整った。
豪州のライオンは健康志向でビール消費が伸び悩んでいるが、高価格のクラフトビールやプレミアムビールは順調だという。
中国については、長江デルタと珠江デルタ地域で「一番搾り」の製造販売をはじめているほか、現地企業との合弁会社・華潤麒麟(きりん)飲料を通じて、飲料事業拡大を図っている。
華潤麒麟飲料の主力商品はミネラルウオーター「セボン」。中国では、飲料水の約4割をボトル水が占めるほど水を買う文化が根付いており、華東(長江デルタ)エリアを中心に内陸へも拡販を図る。中国国内に9工場と33件のOEM(相手先ブランド生産)工場を持ち、全土に製品を供給する体制が整っている。
中国市場は、豪州市場と同様「今後、クラフトビールが富裕層向けに伸びる」と西村副社長はみている。豪州ライオンが、香港とシンガポールに小規模醸造所を開設済みで、中国への販路も持つ。
この強みを生かして中国市場を攻略し、クラフトビール醸造所を上海にもつくるとともに、キリンのクラフトビールも売り込んでいく考えだ。
豪州や日本などの先進国市場と違い、新興国市場は高い成長の可能性があるとはいえ、政情や宗教対立、さらには税制、為替動向、流通などの面でのリスクがある。西村副社長は「国ごとに一つひとつ、中身をきっちり吟味していかないといけない」と語る。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2018年3月7日