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業界有数の技術力を持つ鋼板シャーリング加工業者がなぜ倒産?

中村シャーリング、「代表は粉飾決算をするような人物には見えない」
業界有数の技術力を持つ鋼板シャーリング加工業者がなぜ倒産?

(写真はイメージ)

 中村シャーリングは、1963年(昭38)6月創業の鋼板シャーリング加工業者。材料の自社調達により鋼材の薄板・中厚板をシャーリング加工後に販売し、材料支給による賃加工や加工時に生じたスクラップ販売も展開、鋼板類の取扱数量は年約1万4400トンに上っていた。

 傷のない仕上げや寸法精度の徹底で得意先の注文に応えることが強みとなり、リピート受注を獲得。鋼材商社筋など約40社の得意先を有していた。営業エリアは大阪府を中心とする近隣府県を対象とし、2003年9月期に売上高約9億6200万円を計上した。

 創業者である前代表の時代から、主要取引先の経営破たんや取引の打ち切りなど経営危機に直面してきたが、持ち前の技術力や証券会社に勤めていた現代表の尽力で苦難を乗り切ってきた。

 だが、04年9月期に主要取引先からの受注が落ち込み、売上高が急減。15人いた従業員もリストラして5人まで削減したが、不足した運転資金を金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない状況に陥った。

 この時資金調達のために売上高・利益などを過大に計上した決算書を作成、その後も金融機関ごとに借入先と借入額の内訳が異なる決算書を提出していた。

 十数年も粉飾に手を染め続けた結果、取引金融機関は19行に膨らむことになる。ついには金融機関への返済のために資金を調達しなければならない状態に追い込まれ事業継続を断念、17年11月30日に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 突然の倒産に「代表は粉飾決算をするような人物には見えない」「業界でも有数の技術力を有しているはずなのに、リスケもせずにいきなり倒産するのか」といった声が聞かれた。

 過大な粉飾に手を染めず、早い段階で関係先に事情を説明して協力を取り付けていれば、ここまで大きな影響はなかったかもしれない。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業概要>
中村シャーリング(株)
住  所:大阪市西淀川区中島2−11−98
代  表:中村司氏
資本金:4000万円
年売上高:約9億800万円(16年9月期)
負  債:約17億1000万円

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この代表に会ったとことはないので性格や経営手腕は知らないし、まずもって代表に責任があるのは当然だが、これは緩い融資をした金融機関の責任も相当あると思う。

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