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花粉症を根本から治療する「免疫療法」の効果と注意点

4―5年程度効果が持続も、手間と時間
花粉症を根本から治療する「免疫療法」の効果と注意点

本格的な花粉症シーズンが到来(イメージ)

 日本列島を春の入り口らしい強い風が吹き抜け、本格的な花粉症シーズンが到来した。国民の4分の1が発症しているとされ、日本で一番患者数が多いアレルギー性疾患だ。くしゃみや鼻水、目のかゆみといったアレルギー症状を抑制する薬の服用や、マスク、眼鏡といったグッズが多く発売され、花粉症対策に意識が高まる。そんな中、アレルギーの体質そのものを変えようという治療法「免疫療法」が注目を集めている。

 体内に入った花粉は異物と認識されると、免疫細胞が抗体を作って排除しようとする。このとき、目や鼻の粘膜に存在する「マスト細胞」が抗体で刺激されると、「ヒスタミン」という化学物質を分泌、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を引き起こす。

 花粉症の治療としては、体内のヒスタミンを抑える「抗ヒスタミン薬」を使う方法が多いが、症状を取り除く対症療法に留まり、根本的な治療法ではない。

 一方、免疫療法は、アレルギーの原因物質を少しずつ取り入れて体を徐々に慣らしていき、アレルギー反応を抑える治療法だ。薬剤を皮下に注射する「皮下免疫療法」と、舌下に投与する「舌下免疫療法」とがある。

 日本医科大学多摩永山病院の後藤穣医師(耳鼻咽喉科部長)は免疫療法について、「2―3年続けなくてはならないが、治療を止めた後も患者によっては4―5年程度効果が持続する」とメリットを指摘する。

 スギ花粉の舌下免疫療法の薬は全国で約9万人に処方され、後藤医師の外来でもおよそ患者の1割程度が免疫療法を希望する。

 舌下療法は、投与開始2週間で徐々にアレルゲンの量を増やしていく。その間に、局所的に腫れやかゆみが起きることがあるというが、「有害事象が起きるのはスギ花粉の舌下療法の患者でだいたい3割程度。重篤なアレルギー反応であるアナフィラキシーショックの報告は数件と少なく、安全性の高い治療法」(後藤医師)といえる。

 ただ注意したいのは、免疫療法は、アレルギーの原因となる花粉が飛ぶ2―5月の間は開始できない点だ。今シーズンは別の治療で症状をおさえ、花粉の飛散がおさまった6月頃より治療開始となるのが一般的だ。

 さらに免疫療法は花粉の飛散がない時期も治療を続ける。舌下免疫療法の場合は毎日投与が必要だ。この点も、花粉が飛散するシーズン中だけ服用する抗ヒスタミン薬の治療と大きく異なる。
                   

(文=安川結野)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
後藤医師は、「近くの医療機関で免疫療法を受けられるか、生活環境やライフスタイルから自分に合った治療法を医師と相談して選択することが重要」としつつ、「根本から治療する免疫療法は、今度浸透していくべきだ」と話している。 (日刊工業新聞科学技術部・安川結野)

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