苦戦する三菱重工の中で気を吐く冷熱事業

分社化でM&Aしやすく、世界トップ10目指す

 火力発電設備の低迷や国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発遅延など、大型プロジェクトの苦戦が続く三菱重工業。その中で、空調機やエアコンを主軸とする冷熱事業が気を吐いている。タイの新工場稼働や新冷媒の開発など、世界的な需要拡大を追い風に国内外で攻勢をかける。冷熱子会社である三菱重工サーマルシステムズ(東京都港区)の楠本馨社長に、事業戦略や今後の展望を聞いた。

 ―2016年10月に冷熱事業を分社しましたが、そのメリットは。
 「一定金額の投資案件については、自社で決済できるのが大きい。同業他社の意思決定はものすごく速い。投資決断のスピードが上がり、競合の時間軸にある程度追随できるようになった。分社してテレビコマーシャルも始めたが、これも自社で決定した。採用に大きな効果が出ているほか、社員のモチベーション向上にもつながっている」

 ―18年1月にカーエアコン事業を再統合しました。
 「自動車向けは限られたスペースに設置するノウハウや、車両の電動化が進む中で省エネルギー性能の一層の向上が求められている。パッケージエアコンやルームエアコンに比べ、制約の多い空調システムだ。カーエアコンで得られる技術を冷凍機や空調機に還元するなど、技術シナジーに期待したい」

 ―タイ工場を増設しました。その狙いは。
 「生産能力は15年度比3割増の270万個に高まる。これまで投資を抑えてきたので、エアコンのシーズンピークに能力が不足し、販売機会の損失がしばしばあった。人口増で需要が急拡大する東南アジアのほか、中国や日本でも攻勢をかけたい。機会損失の是正だけでも受注が見えており、来期は売り上げがかなり伸びる」

 ―環境規制の厳格化で、新冷媒のニーズが高まっています。
 「現在主流のハイドロフルオロカーボン(HFC)は地球温暖化係数が高く、世界的に使用の制限が出てきている。当社は(温度域が)0度C以下の冷凍機などで、温暖化係数の低い自然冷媒(二酸化炭素〈CO2〉)に力を入れている。特にCO2自然冷媒で大型機を作れるのは当社だけなので、顧客からの期待は大きい。20馬力まで製品化済みだが、さらに大型の開発を進めている」

 ―販売力の強化が課題となっています。
 「海外は販売代理店がベースだが、製品の特徴や技術が伝わりにくい現状がある。ルームエアコンなどコモディティー化が進む製品に関しては、直販など競合のような戦略を考えないといけない」
楠本馨社長

(聞き手=長塚崇寛)

日刊工業新聞2018年2月22日

長塚 崇寛

長塚 崇寛
02月27日
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三菱重工本体からの権限移譲により、競合の専業メーカーや電機メーカーと同じ時間軸で勝負する地盤が整いつつある。意思決定の迅速化と三菱重工グループの技術力で、まずは世界トップ10入りを目指す。目標達成には販売力の強化が不可欠。分社化によりM&A(合併・買収)や業務提携などもしやすくなったはず。課題解決に向けた次の一手に注目したい。

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