持ち株会社移行から約20年、NTTが過去最高益の先に見る成長

日本発のデジタル変革を起こす

 NTTの2018年3月期連結決算業績予想は営業利益が前期比3・3%増の1兆5900億円と過去最高を見込む。NTTドコモやNTT東西地域会社が安定した利益を確保するほか、成長市場の海外事業も貢献。NTTの鵜浦博夫社長は「1兆6000億円の大台に乗るだろう」と、通期予想を上回る可能性について自信を示した。

 NTT東西地域会社の営業利益は増益見通しだが、特別損失を計上。また光回線サービスの純増数は17年4―12月期で40万契約と前年同期の64万契約に比べ伸び悩んでいる。

 光の卸先である携帯大手のスマートフォンとのセット割需要が一巡したため。鵜浦社長は「信号機の光化をはじめ新規の取り組みを増やしていく」と述べた。

 NTTドコモはスマホなどの通信料収入は堅調。端末販売関連収支も「iPhone(アイフォーン)8」などの販売で改善した。佐藤啓孝最高財務責任者(CFO)は「特殊要因を除く営業利益は、社内の見立てより強めに推移している」と話す。

 一方、NTTコミュニケーションズやNTTデータが担う海外事業の営業利益は前期比53・8%増の1320億円を見込む。中核子会社である南アフリカ共和国のディメンションデータも黒字転換し、NTTコムとクラウドサービスを統合することで競争力を強化する。

 鵜浦社長は19年3月期について「好調な海外のクラウドビジネスで売り上げを伸ばし(成熟する)国内はコスト削減を徹底し、利益を確保する」と話す。

楽天ローミング「断る理由はないが、義務でもない」


 NTTの鵜浦博夫社長は2017年4―12月期の決算発表会見で楽天の携帯電話事業参入に関連し「楽天から(NTTドコモの回線を利用する)ローミングの申し出があれば断る理由はない。ただ義務でもない。ビジネスとしてしっかり交渉する」との考えを示した。

 楽天は携帯電話事業に参入すると17年12月に発表しており、19年から通信サービスを始める予定だ。ただ基地局の整備など投資がかさむため、全国をカバーするNTTドコモの回線共用も視野に負担を軽減する。

 鵜浦社長は楽天の詳細な事業がまだ見えないとしながらも「楽天は電子商取引(EC)などにおける我々のパートナーという認識だった。だが(同じ土俵に乗り込んでくるなら)パートナーとしての組み方を考え直す」と、現在の関係性を見直す可能性を示唆した。

日刊工業新聞2018年2月12日 の記事に一部加筆



鵜浦社長インタビュー「(強みは)R&D」


 ―持ち株会社体制に移行したのは1999年ですが、当時から収益構造は大きく変わりました。
 「当時のように音声収入が中心の会社ではなくなった。音声以外のIP系・パケットや、海外を含むシステム構築(SI)の収入が拡大している。大きく変わったのはスマートフォンが登場し、クラウドの時代と言われ始めた10年頃から。市場のメーンプレーヤーは通信事業者から米アップルなどの北米企業となり、サービス全体の構造が変わってしまった。市場の変化により、我々は変化せざるを得なくなったし、我々も変わろうとした」

 ―具体的には。
 「中期経営戦略では、まず海外でのクラウドビジネスを柱に据えた。アタッカー(挑戦者)としてM&A(合併・買収)を重ね、売り上げを拡大し、利益にも目を向けて改革に取り組んだ。一方、国内は収益力の回復を目指して光の卸モデルを開始し、スマホのデータ量を家族でシェアできる料金プランなどを投入した。こうしたビジネスモデルの転換により、競争モデルも回線や端末からサービスへと変わった」

 ―マーケットは常に変化しますが、今後の方向性は。
 「ここ数年、産業界ではデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の動きが出ている。ユーザー企業は人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)への対応を進めており、我々はそうした企業をサポートするグループでありたい。AIやIoTなど変革を促すための道具は、我々にはある」

 ―企業間取引を通じてユーザーにサービスを提供するビジネスモデル「BツーBツーX」をグループで進めていますが、顧客のデジタル変革をサポートするモデルになっていますか。
 「ファナックとの取り組みをはじめ、そうなりつつある。新しいサービスが生まれた時に新しいプレーヤーが登場する。BツーB(企業間)の間に、もうひとつBが入ることもある。だが既存ビジネスだけの変革ではプレーヤーが増えず、縮小均衡するだろう。だからXを見つけることが大切だと言った。我々は黒子として道具を提供し、次のステップで触媒役になってビジネスを大きくする。これから『共創・協創』の時代になるのは間違いない」

 ―NTTがパートナーとして選ばれるための強みは何ですか。
 「我々がラッキーなのは、R&Dを持っていること。土台となる通信回線に加え、AIやIoTなどの技術があり、それらが連関して(デジタル変革が)動きだしている。しかし、日本は北米と比べ、その動きが遅い。産業界にはさまざまな規制があるが、それを言い訳にしてはスピードが上がらない。日本発のデジタル変革を起こしていかなければならない」

日刊工業新聞2018年1月5日


                   

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
02月12日
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 グローバルなIT企業へと変貌を遂げるNTT。国内外のユーザー環境や技術革新の変化に応じ「これからも事業構造の変革を続けるしかない」と鵜浦社長は強調する。あらゆる産業と通信が融合する中で、自らも変革の手綱を緩めず、いかにユーザー企業のビジネスをサポートし続けられるかが持続的な成長のカギとなる。
(日刊工業新聞第一産業部・清水耕一郎)

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