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新体制のヤフーは「データの会社」になれるのか?商品企画・生産最適化を支援

企業のデータ利活用を後押し
新体制のヤフーは「データの会社」になれるのか?商品企画・生産最適化を支援

新規事業構想を発表した川邊健太郎ヤフー副社長(右)と実証実験に参加する企業の担当者ら

 ヤフーは6日、企業が持つビッグデータ(大量データ)と人工知能(AI)技術を掛け合わせ、企業の多様な活動を支援する新規事業を2019年度に始めると発表した。企業が消費者の需要を理解した商品を企画したり、需要予測に基づき生産を最適化したりできるよう支援する。ヤフーは多様なサービスで蓄積したデータを活用し、事業を拡大する戦略を掲げる。その一環として企業のデータ利活用を後押しする事業体制を構築する。

 ヤフーは自社のデータやAI、スーパーコンピューターと、企業が持つデータを掛け合わせて分析。商品の需要予測情報などを提供する見通し。顧客は企業のほか、自治体や研究機関を想定する。新規事業の構築に向けて日産自動車や江崎グリコ、日本プロサッカーリーグなどと連携し、実証実験を本格化する。実証実験の参加機関は追加で募る。

 ヤフーは検索サービスとインターネット通販サービスのデータを掛け合わせてネット通販の利用率を高めるなど、異なるサービス同士のデータを連携することで効果を創出している。新規事業では、こうした知見を応用する。同日、都内で会見した川邊健太郎ヤフー副社長は「(外部機関と連携し)次の事業の柱を作っていく」と意気込んだ。

新体制でデータの会社目指す


 ヤフーは1月24日、川邊健太郎副社長最高執行責任者(COO、43)が6月に社長最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表した。宮坂学社長CEO(50)は代表権のない会長に就く。経営層の若返りを図り、市場変化の激しいインターネット業界を勝ち抜く。また、CEOとCOOを統合し、迅速に意思決定できる体制に移行する。

 同日開いた会見で川邊副社長は「ヤフーは『データの会社』を目指し、事業拡大と未来の創造に取り組む」と抱負を述べた。同社は多様なサービスによって蓄積したデータを活用し、広告事業やネット通販事業などを拡大する戦略を掲げる。川邊副社長はその取り組みを加速する考えだ。

 宮坂社長は社長交代の理由について「(データの会社を目指すという)新しい挑戦は新しいリーダーシップで行うことが適切と考えた」と説明。宮坂社長はヤフーの完全子会社のZコーポレーション(東京都千代田区)の代表取締役にも就任し、新領域を開拓する。

【略歴】川邊健太郎氏 98年(平10)青山学院大法卒。00年ヤフー入社。09年GyaO代表取締役。12年ヤフー副社長。東京都出身。

【素顔/ヤフー社長に就任する川邊健太郎(かわべ・けんたろう)氏】
 「インターネットを心底愛している」と公言する。インターネット業界はベンチャーの台頭やグローバル企業との競合が激しさを増す。業界の老舗企業トップとして、インターネットへの情熱や理解力を強みに手腕を発揮する。宮坂社長も「(川邊氏は)突破力がある。今のヤフーに求められている」と期待する。

 社長就任の打診は2017年11月。宮坂社長と2人で入った東京・六本木の飲食店で「社長やったら良いじゃん」と軽い言葉で告げられたとか。10年以上共に働き、気心が知れている間柄ならではのバトンタッチだ。

 経営者としての宮坂社長には新事業を作り出す社員だけでなく、事業の運用を支える社員の気持ちまでくみ取る姿勢を学んだ。こうした姿勢も継承する考えだ。

 休日はアウトドア派。狩猟免許を持ち、地方の害獣駆除に出かける。

(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2018年2月7日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
新体制になり一層「データの会社」を推しているヤフー。はたしてどこまで生まれ変われるのでしょうか。

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