続・ユニキャリア売却の波紋!なぜニチユ三菱に決まったのか?深層レポート
革新機構の方針は「高い価格の相手」-政府は中国資本が入る独キオンへの売却を懸念?
ニチユ三菱フォークリフトがフォークリフト大手ユニキャリアホールディングス(HD、東京都品川区)を買収する方針であることが29日わかった。買収金額は1000億円を超えるとみられる。ユニキャリアHDの株式約53%を保有する政府系ファンドの産業革新機構は、ニチユ三菱と世界シェア2位の独キオングループのどちらに売却するか検討していた。ニチユ三菱は買収で世界シェアが6位から3位に高まる。世界シェア1位の豊田自動織機を追い上げる狙いだが、買収効果をいかに発揮するか課題もある。
<世界3位へ。「日本勢で決着」も新興国開拓で道半ば>
フォークリフト業界の目玉となっていた大型再編が、国内勢同士の統合で決着が付く。元をたどれば国内4社に行き着く混成企業が誕生する。ニチユ三菱は2013年4月、三菱重工業のフォークリフト事業とニチユが統合して発足した。ユニキャリアHDは日立建機と日産自動車のフォークリフト事業が母体で13年4月に統合を完了した。日立建機と日産は現在も株式を保有する。
買収に名乗りを上げた2社のうち、キオンの方がシナジーが高いとみられていた。キオンは売上高の約8割を欧州で占める。買収で日本市場に参入できる上、ユニキャリアHDが北米を得意とするなど、地域の補完性が高かった。ニチユ三菱の場合、欧州での補完効果が期待できる。ユニキャリアHDはスペイン工場の生産能力に余力があり、ニチユ三菱の車両を生産すれば、工場の操業度を高められる。
ただ、2社が統合し、成長する新興国市場をどう開拓するかが不透明だ。両社の得意地域は北米で重なる。ニチユ三菱は15年3月期売上高の4割が米州で、アジア・中国は13%にとどまる。ユニキャリアHDは中国の新興フォークリフトメーカーを買収し、需要の高い低価格車の拡販に乗り出した段階。こうした両社の取り組みを連携させ、市場をいかに深耕できるかが問われる。
シナジーを期待しやすいのが、研究開発体制の強化だ。豊田織機は燃料電池(FC)式フォークリフトの実証実験を15年2月に実施するなど、将来技術への投資で先を行く。統合による規模拡大で、研究開発を追い上げる投資余力を得られる。2社とも大型再編で発足して数年で次の統合に入る。性急にも思えるが、それだけ急がなければ豊田織機の背中が遠のく危機感がある。短い時間で新体制を軌道に乗せることが求められる。
<出口戦略では官民関係者の思惑が錯綜>
政府系ファンドの革新機構が出資するユニキャリアHDの売却先を巡っては、官民関係者の思惑が錯綜していた。その多くは中国資本が入る独キオンへの売却懸念だった。同業他社の経営幹部が「外資に売るんじゃない」と勝手な注文を付けたり、永田町の意向を忖度(そんたく)した一部官僚が”対中アレルギー“を発症して反対したりと外野の声はかまびすしかった。
一方、欧州連合(EU)がユニキャリアHD売却先の選定で公正な審査を日本側に求めてきたと言われ、騒動は国境を越える事態となっていた。
当の革新機構の出口戦略は一貫していた。より良い条件を提示した企業へ売却するだけで、外国企業を排除しない方針は投資決定した11年に明らかにしていた。革新機構の広報担当者はニチユ三菱への売却報道について「何も申し上げることはない」と肯定も否定もしていない。
革新機構は30日付で日産自動車副会長の志賀俊之氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する。新体制の下で、優良企業となったユニキャリアHDの売却先を正式に決定することになりそうだ。
<世界3位へ。「日本勢で決着」も新興国開拓で道半ば>
フォークリフト業界の目玉となっていた大型再編が、国内勢同士の統合で決着が付く。元をたどれば国内4社に行き着く混成企業が誕生する。ニチユ三菱は2013年4月、三菱重工業のフォークリフト事業とニチユが統合して発足した。ユニキャリアHDは日立建機と日産自動車のフォークリフト事業が母体で13年4月に統合を完了した。日立建機と日産は現在も株式を保有する。
買収に名乗りを上げた2社のうち、キオンの方がシナジーが高いとみられていた。キオンは売上高の約8割を欧州で占める。買収で日本市場に参入できる上、ユニキャリアHDが北米を得意とするなど、地域の補完性が高かった。ニチユ三菱の場合、欧州での補完効果が期待できる。ユニキャリアHDはスペイン工場の生産能力に余力があり、ニチユ三菱の車両を生産すれば、工場の操業度を高められる。
ただ、2社が統合し、成長する新興国市場をどう開拓するかが不透明だ。両社の得意地域は北米で重なる。ニチユ三菱は15年3月期売上高の4割が米州で、アジア・中国は13%にとどまる。ユニキャリアHDは中国の新興フォークリフトメーカーを買収し、需要の高い低価格車の拡販に乗り出した段階。こうした両社の取り組みを連携させ、市場をいかに深耕できるかが問われる。
シナジーを期待しやすいのが、研究開発体制の強化だ。豊田織機は燃料電池(FC)式フォークリフトの実証実験を15年2月に実施するなど、将来技術への投資で先を行く。統合による規模拡大で、研究開発を追い上げる投資余力を得られる。2社とも大型再編で発足して数年で次の統合に入る。性急にも思えるが、それだけ急がなければ豊田織機の背中が遠のく危機感がある。短い時間で新体制を軌道に乗せることが求められる。
<出口戦略では官民関係者の思惑が錯綜>
政府系ファンドの革新機構が出資するユニキャリアHDの売却先を巡っては、官民関係者の思惑が錯綜していた。その多くは中国資本が入る独キオンへの売却懸念だった。同業他社の経営幹部が「外資に売るんじゃない」と勝手な注文を付けたり、永田町の意向を忖度(そんたく)した一部官僚が”対中アレルギー“を発症して反対したりと外野の声はかまびすしかった。
一方、欧州連合(EU)がユニキャリアHD売却先の選定で公正な審査を日本側に求めてきたと言われ、騒動は国境を越える事態となっていた。
当の革新機構の出口戦略は一貫していた。より良い条件を提示した企業へ売却するだけで、外国企業を排除しない方針は投資決定した11年に明らかにしていた。革新機構の広報担当者はニチユ三菱への売却報道について「何も申し上げることはない」と肯定も否定もしていない。
革新機構は30日付で日産自動車副会長の志賀俊之氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する。新体制の下で、優良企業となったユニキャリアHDの売却先を正式に決定することになりそうだ。
日刊工業新聞2015年06月30日深層断面を一部編集