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「航空機を固定する技術」で世界に挑む老舗メーカー

芦森工業、M&Aのシナジー生かす
「航空機を固定する技術」で世界に挑む老舗メーカー

子会社が手がける、機体にシートを固定するシート用フィッティング

 航空機の機体にシートを固定するシート用フィッティング(固定装置)は、仕様・デザインの変更が周期的に訪れる。「今がちょうど、その時期。固定性能・着脱機能に優れ、吸い上げた顧客ニーズを生かした製品を開発中で、しっかり提案していく」と山口武志芦森工業経営企画室マネジャーは力を込める。

 シート用フィッティングはじめ、航空機やヘリコプターの貨物固定具は芦森工業が2016年に買収した子会社オールセーフ(横浜市中区)が手がける。同子会社はラッシングベルトやトラック荷台向けレールなどの物流分野向け機器、バスや福祉車両向け車いす固定システム、航空機向け固定機器が3本柱。共通するのは強みの「固定する技術」だ。

 現状は物流の売上高比率が高いが、「市場の頭打ちも想定し、航空と福祉の比率を伸ばす」(山口マネジャー)と気を引き締める。

 固定具などを扱う米アンクラインターナショナルの日本拠点がオールセーフの起源。米アンクラが米連邦破産法11条で再建を図る時に、同社海外拠点がそれぞれ独立。アンクラの元日本法人と元ドイツ法人は、「オールセーフブランド」を立ち上げ、その後に社名も改めた経緯がある。

 航空機シート用フィッティングは、兄弟会社のオールセーフドイツ(ドイツ)が手がけるフィッティング用レールと組み合わせてシートメーカーに提案。欧エアバスや米ボーイングなどの機体に取り付けられる。兄弟会社で協力し、機体とシートに相性の良い製品を開発して提供。旅客機に加え、貨物機、警察・消防のヘリ、国産ロケットなどの荷室向け固定具も実績がある。

 生産は東北工場(宮城県大崎市)が担っている。航空業界向けで鍛えた品質保証体制は信頼の証しで、他事業にも好影響を与える。今後は空港や航空会社の運搬設備向け、防衛省向け事業を手がける芦森のルートなどを通じた業容拡大も狙う。設計・開発・製造までを一貫する強みを武器に欧米の競合に挑む。
日刊工業新聞2018年1月22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
シートベルトなどの自動車安全部品、消防用ホース、産業用繊維資材、物流省力化システムなど、多彩な製品を芦森工業は手がける。金属加工が強みのオールセーフ買収で、業容拡大に加え、生産再編などによるシナジー創出も進めている。航空業界向けでは、芦森本体が従来から航空局向けなどで緊急時用のエアーテントも手がけている。 (日刊工業新聞大阪支社・松中康雄)

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