古河電工がカーボンナノチューブ電線を商用化へ

合成実験炉を新設、小型軽量な自動車用モーターなど実現可能に

 古河電気工業はカーボンナノチューブ(CNT)を使った電線の商用化に乗り出す。炭素化合物からCNTを合成する実験炉を6月をめどに同社研究所へ新設する。電線向けに特化したCNT合成炉は、国内では初という。CNTを使った電線を巻き線などに加工すれば、小型で軽量、かつ耐腐食性に優れた自動車用モーターの開発につながる可能性がある。

 開発する電線は、一般的に使われる銅線などの代わりにCNTを使う。古河電工は電線向けCNTの合成に特化した実験炉を新設する。

 CNTは銅に比べて5分の1と軽いものの、鋼鉄の20倍の強度を持つことなどから、次世代の電線材料として期待されている。一方で、銅の4倍程度の電気抵抗があるといった課題もある。だが、開発が進めば銅と同程度の電気抵抗にできる可能性があるとされている。

 実験炉は原料となる液体を加熱してガスにし、そのガスから炭素だけを取り出して固体にする化学気相成長(CVD)法で、CNTを合成する。同社の先端技術研究所(横浜市西区)または同研究所の平塚分室(神奈川県平塚市)に設置する。

 投資金額は明らかにしていない。これまで自社にはCNTの合成炉がなく、共同研究している信州大学の炉で合成していた。

 すでにCNT電線を使ったモーターの試作に成功している。モーターの出力は3ワット程度だが、2018年度に50ワット程度、19年度に600ワット級の移動体向けモーターを試作する計画。

 CNTの紡糸や絶縁技術を向上して電気抵抗を減らし、25年度にもモーターを製品化する。まずは軽さが重視されるモータースポーツ用の電気自動車(EV)への搭載を目指す。将来的にはコンピューターやスマートフォン、量販車などへも展開する考え。

日刊工業新聞2018年1月11日



信州大とは11年から共同研究


 古河電気工業は2011年度中にも自動車用組み電線(ワイヤハーネス)の重量を半減できるカーボンナノチューブ(CNT)電線の試作を始める。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成をもとに、信州大学などと共同で、長さ1メートル以上のCNT電線の生産技術の確立を目指す。12年度下期以降は、同1キロメートルの長尺電線の試作段階に進む計画。14年度下期をめどに、自動車メーカーに技術提案する体制を整える。

 古河電工は、信州大学工学部の遠藤守信教授(当時)らの研究チーム、同教授と昭和電工が設立したベンチャー企業のMEFS(長野市)とともに、長尺化しても導電率が低下しにくい新構造のCNT電線の製造方法を開発している。

 既存の製法では、送電用のCNTの長さは数センチメートルレベルにとどまるという。

 11年度上期までの研究成果を踏まえ、古河電工などは11年度下期以降、既存設備を活用して試作に着手。送電線として実用レベルとされる長さ1キロメートルの目標達成ととともに、ワイヤハーネスに適用可能な被覆技術を確立した上で、自動車メーカーとの実証実験に臨む。

 ワイヤハーネスの重量は乗用車1台につき25キロ―30キログラム程度とされる。CNTは分子レベルでの電流輸送量が1平方センチメートル当たり1ギガアンぺアと、銅に比べ1000倍の導電率を持つ。

 だが従来構造では、分子同士を結合させて長尺化すると導電率が悪化する欠点があった。

日刊工業新聞2010年8月31日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
01月14日
この記事のファシリテーター

「夢の材料」と言われてきたCNTが徐々に実用化されてきた。本来の狙いである高い導電性などを発揮できる「単層CNT」を量産する手法も確立されてきて、価格も下がりつつあるという。91年に名城大の飯島先生がCNTを発見して以来、実に25年以上が経過した。今は短期の成果が求められる傾向が強い上に、研究開発にかかるお金は大きくなりつつある。こういった息の長い研究成果をいかに持続して産業につなげられるかも課題といえそうだ。

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