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いよいよ2018年からレノボ傘下入り。富士通は成熟市場でどう競争力を高める?

富士通クライアントコンピューティング社長・齋藤邦彰氏
 富士通のパソコン事業は、2018年に中国レノボから51%の出資を受けて傘下に入り、シェアの拡大を目指す。パソコンが汎用化し市場が成熟する中、どう競争力を高めるのか。富士通クライアントコンピューティング(川崎市中原区)の齋藤邦彰社長に聞いた。

 ―最終合意まで時間がかかりました。
 「レノボの狙いはビジネスの最大化だ。よく話し合い、当社の方針を変えない方が良いと結論付けた。自社工場や設計・開発を生かし、短いリードタイムで顧客の要望に応えるやり方は変えない」

 ―部品や設計の共通化をどう進めますか。
 「製品に違いがある方が成長するという結論のため、コスト目的の共通化はしない。例えば、最軽量モデルで共通するのはCPUと基本ソフト(OS)だけ。点数は少ないが、共同調達によるコスト削減効果は大きい」

 ―開発の強化は。
 「価値を創造するエンジニアが必要だ。顧客の要望を聞くだけでなく、フィールドに出て価値を見つける活動をする。ハード開発もソフト開発もツールにすぎない。開発部門を『多能工』化し、流動的な組織にする。また感性品質を重視した開発を強化する」

 ―海外展開の拡大が期待されます。
 「高いシェアを持つドイツを中心に欧州をしっかりやる。クール・ジャパン人気のあるアジアも商機がある。海外でも当社にはカスタマイズの要求が強く、レノボとすみ分けできる。ただ、統合効果で一番販売が伸びるのは日本だ。グローバル合計で市場以上の成長を狙う」

 ―注目する市場の変化はありますか。
 「個人向けで15万円以上の高価格帯が伸びている。買い替えサイクルが延び、購入予算が増えたようだ。音の良い製品、テレビやインテリアとして使えるデザイン性の高い製品が好調だ。今の家電の高価格化と同じことがパソコンに起きる」

 ―今までと同じパソコンでは、消費者は高い価格を受け入れないと思われます。
 「今までのパソコンは『何にでも使って』という製品だ。そうしていると、人工知能(AI)スピーカーのような専用機が出てきた。専用機の役割を取り込めば、パソコンの価値が高まる。AIスピーカーや愛玩ロボットのようなコミュニケーション相手としても可能性がある。発展系がどこにあるか探り、心地よく簡単に使えるように作り込む」

 ―汎用化から抜け出せますか。
 「台数の飽和や汎用化という状況は変わらないが、これと違う市場はある。もっと魅力ある製品ができる環境になった。統合効果などで既存製品も成長でき、当社の資産を生かしたAIパソコンなどの次世代品を出せる。18年は『実はパソコンでこんなことができる』と言える年になる」
(聞き手=梶原洵子)
日刊工業新聞2017年12月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
齋藤社長の表情からは、新しい方向へ前進する意気込みが見て取れた。「働き方改革が進めば、家庭向け製品は仕事とリラックスの両方が求められる」(齋藤社長)とみて、独自の開発路線を強化する。グループ入り後は、世界的な規模拡大を追うレノボの商品群と、より明確な差異化が求められる。個性を際立たせる推進力にしてほしい。 (日刊工業新聞社 編集局・梶原洵子)

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