「ルネサス再生」深層レポート。非難された官民ファンドの救済は成功したか?
産業革新機構のナンバー2、朝倉COO「神懸かり的なスケジュールでリストラを実行した」
これからが正念場。主要株主、自動車業界の意向が“出口戦略”を左右?
ルネサスの提携戦略は、同社株式の69・15%を保有する産革機構の出口戦略とも密接に関係する。産革機構には政府が出資しているほか、トヨタ自動車やパナソニックなど有力な日本企業が顔をそろえている。「外資・内資という分け方で議論するのはナンセンス」(朝倉専務)ではあるものの、ルネサスが外資系と提携する場合、一筋縄でいかない可能性もある。今後、“日の丸半導体”をどのように自立させるのか。それは日本の車産業や産業機器産業の行く末にも関わってくる。
産業革新機構が買収する前のルネサスや中小型液晶のJDIはコーポレートガバナンス問題企業だった。それが外部から経営者を送り込んで経済合理性に基づいて構造改革を“普通”に行い、数年でかたや初の当期黒字化、かたや上場を果たした。
政府が月内にまとめる成長戦略「日本再興戦略」の1丁目1番地もまたコーポレートガバナンスの強化だ。12年末の安倍晋三政権発足以降、上場企業に対して社外取締役の導入を原則義務付け、株主資本利益率(ROE)の経営目標への採用を促して、企業経営に規律を働かせる仕組みを目指してきた。
政府の産業再生戦略、シャープは救済するのか
日本企業も欧米のように株主からのプレッシャーが強まり、「いかに稼ぐ力を高めるか」が最優先の経営課題となる。両社が適切なガバナンス体制の下で成長への道筋を付けたことは、産業再生の新たな成功モデルと位置づけていいだろう。
同じ電機業界では現在、不適切会計問題に揺れる東芝や経営再建中のシャープが“いつか来た道”を歩いている。ただ、昔と違って、今はコーポレートガバナンス問題企業への処方箋が存在する。
(文=後藤信之、鈴木岳志)
日刊工業新聞2015年06月26日深層断面