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廃炉・賠償に年5000億円。「東電と提携するメリットが無い」

新体制始動から約半年、「稼ぐ力」は底上げされたか
廃炉・賠償に年5000億円。「東電と提携するメリットが無い」

新経営体制発足に伴う記者会見(川村隆会長(左)と小早川智明社長、6月)

 東京電力ホールディングスは6月に新体制を発足させた。日立製作所をリーマン・ショック後の危機からV字回復させた川村隆氏を会長に迎え、社長には小売り部門のトップの小早川智明取締役が昇格した。

 東電は柏崎刈羽原子力発電所が稼働しない状態でも4期連続の黒字を達成するなど体質改善は進む。だが、福島第一原発事故の廃炉・賠償費用として、年5000億円を自力で賄う必要がある。新体制の使命は明確で、「稼ぐ力」の底上げだ。

 調達改革とトヨタ自動車元常務の内川晋氏の指導の下、「カイゼン」を推進し、年6000億円以上のコスト削減を急ぐがハードルは高い。

 川村会長も「頑張ってやっとできるか。社員の能力をフルに発揮した、ちょっと上にある数字」と認める。

 収益性の向上でもうひとつの柱になるのが送配電事業と原子力発電事業の他電力との再編統合だ。人口減少社会で業界全体が縮小する中、他電力にとっても既存事業の合理化は課題だ。

 目標達成を左右するのは改革のスピードだ。川村会長は日立時代に社長就任後に策定した「100日プラン」で上場子会社を本体に取り込むなど抜本的な改革を断行した。

 東電でも就任後に改革の工程表の作成に着手したものの、取り組む課題が他社にもまたがるため、一筋縄ではいかない。

 5月に打ち出した新しい経営計画「新々・総合特別事業計画」には再編統合については早急に他電力と意見交換を始め、秋をめどに具体的な進め方を決めると記載した。

 だが、他電力との意見交換は難航しているのが現実だ。東電側は進捗に遅れはないとの認識だが、「福島の先行きが不透明な東電と提携するメリットが無い」(大手電力幹部)との声も少なくない。
日刊工業新聞2017年12月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
東電は他電力との提携を後押しするような制度を国に求めている。国がどのような枠組みを提供するか。2018年以降の焦点になる。

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