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ニセモノはこうして排除する!模倣品対策の現状と対策

トレーニング・ギア「SIXPAD」美容ローラー「ReFa」の例に見る
ニセモノはこうして排除する!模倣品対策の現状と対策

摘発した「SIXPAD(シックスパッド)」の模倣品

 知的財産は企業にとって競争力の源泉だ。それは裏を返せば、常に狙われるリスクをはらむということでもある。中国を始めとした新興国市場の台頭に、インターネットの普及が加わり、模倣品や海賊版が世界中にあふれかえる。OECD(経済協力開発機構)によると、2013年時点で世界の模倣品、海賊版の流通総額は約4600億ドル(約50兆円)で、世界貿易額の約2.5%にも達する。知財をいかに守っていくかも、知財経営を進める上では避けられない課題だ。

絶対に許さない


 「模倣品を絶対に許さない」「徹底的に戦い続ける」。ブランド開発カンパニーを掲げるMTG(名古屋市中村区)の模倣品に対する基本方針はこの二つ。プロサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウド氏と共同開発したトレーニング・ギア「SIXPAD(シックスパッド)」のほか、美容ローラーに代表されるビューティーブランド「ReFa(リファ)」などでニセモノが後を絶たない。

 MTGが自社の公式ウェブサイトに開設した「模倣品対策ページ」では、逮捕・摘発・訴訟・税関差し止めの事例を生々しい写真などとともに紹介し、注意を喚起している。長谷川徳男執行役員 知的財産・法務本部長は「お客様が模倣品と知らずに使って被害を受けることを防ぎたいことは勿論、本物であると勘違いされブランドにキズがつくことも危惧している」と悩みを打ち明ける。

現地の調査会社と連携


 模倣品には商品だけでなくパッケージやロゴまでもまねるものや、デザインだけをまねるものなど複数の傾向がある。MTGでは模倣品の製造拠点がある中国で現地の調査会社と連携し、当局に要請して模倣業者の摘発などを進めている。例えば、2016年9月は、「SIXPAD(シックスパッド)」の模倣業者を摘発し、36個の模倣品を押収した。2016年11月には、中国のウェブサイトで販売されていた「ReFa(リファ)」―美容ローラーの模倣品の製造拠点を突止め、刑事摘発に成功した。犯人は逮捕され、完成品1200台を含む5500点以上の部品等を押収した。また、2017年4月に中国で刑事摘発に成功した姿勢サポートブランド「Style(スタイル)」の模倣業者からは製品36個、部品や取扱説明書などは実に約5万3000点を押収した。
「ReFa(リファ)」正規品(左)と模倣品(右)

 「2010年から対策を始めた税関差し止めでは、2016年度に意匠権の行使による日本での税関差し止めの78%をMTGの商品の模倣品が占めた。ただ、小口で入ってくるものもあるのですべてを止めるのは難しいのでは」(長谷川執行役員)という。税関職員を対象に模倣品の見分け方を説明する「税関研修」を毎年実施しており、2017年も9月から11月に全国7税関で開催した。

年間9198サイトを削除


 インターネットで電子商取引が活発になる中では、模倣品を販売するウェブサイトを見つけて削除する「ウェブ対策」も極めて重要となる。MTGは協力会社の力も借り、日本や中国のウェブサイトをパトロールして2017年9月期には、年間9198サイトを削除した。容疑者を特定できない場合が多いが、地道な作業を続ける。

 多様なブランドを展開するMTGの・特許・意匠・商標の出願件数は2017年11月時点でグローバルで約2200件にのぼる。模倣品と徹底抗戦できるのは、松下剛社長が「模倣品は絶対に許さない」という強い意志を持っていることが、知財部門が迷いなく取り込め、スピード感のある対応につながっている。知的財産・法務本部知的財産部の15人を中心に戦いを続ける。知的財産部ブランド保護課の林政克課長は「経験することで分かることがある」と、会社として模倣品対策の成長を実感する。

世界各地域に専門員


 模倣品はより精巧になり、流通も世界規模に広がる。アジアで製造された模倣品が中東を経由し、アフリカに流れるなどというケースも、珍しくはない。そのため経済産業省・特許庁では米国、ドイツ、中国、韓国、インド、UAE、シンガポール、タイ、ブラジルといった世界の各地域に専門員を配置し、現地の知財に関する法制や政策を調査しつつ、日本企業をサポートしている。加えて海外で日本製品の真贋判定セミナーを開催したり、政府機関職員などを招へいして関係構築や産業界を含んだ意見交換などを実施。グローバルに広がる模倣品の対策に乗り出している。
出典:2015年度模倣被害調査報告書(特許庁)

 国内では国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)が組織され、91団体、164企業が参加している(2017年3月現在)。2002年からは官民協力して定期的に官民合同訪中団を組織して中国に派遣しており、ここで要請したことの一部が、中国での知財法改正や摘発活動として具現化しているという。

消費者の意識


 ただ模倣品や海賊品のはん濫を最終的に抑えることができるのは、消費者の意識にほかならない。特許庁では2003年から模倣品・海賊版の撲滅キャンペーンを実施。15回目となる今年は12月1日からスタートしており、体感型イベントなどを実施した。今回は10代後半の若者に狙いを定め、特設ウェブサイトの開設、体感型イベントの開催を行っている。特設ウェブサイトでは、「本物」を買うことが自分の幸せ、世の中の幸せにつながるという内容の動画配信や、模倣品を購入しないためにチェックすべきポイントについて解説する。動画中で、ラップ調で訴えるメッセージが当たり前になることが最大のニセモノ対策である。

※このキャンペーンについては、METIジャーナル60秒解説「平成29年度『模倣品・海賊版撲滅キャンペーン』を実施」をご覧下さい。

        <平成29年度キャンペーンイメージ>
   
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昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
最近では製品情報が少ない通販サイトでの購入が増えていることも、模造品を購入してしまう一因になっているように思います。

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