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赤い羽根、赤十字、ユニセフが圧倒。いびつな日本の寄付構造

世界寄付指数ランキングで111位、多様な募金形態に目を向けよう
 次の順位は何のランキングかご存じだろうか。 

第1位 ミャンマー       第6位 豪州

第2位 インドネシア      第7位 カナダ   

第3位 ケニア         第8位 アイルランド

第4位 ニュージーランド    第9位 アラブ首長国連邦(UAE)

第5位 米国          第10位 オランダ


 ご存知の方は相当な世界通だ。答えは、「2017年版 世界寄付指数ランキング」。英国のCharities Aid Foundation(チャリティ支援基金=CAF)と米国の世論調査会社ギャラップが2016年、過去1カ月の間に「団体に金銭による寄付をしたことがあるか」「団体でボランティア活動をしたことがあるか」「支援を必要としている見知らぬ人を助けたことがあるか」という3項目について、160か国の15歳以上を対象に電話ないし対面で聞き取り調査を実施。「したことがある」と答えた人の割合(総合指数=3項目の単純平均)をランキング化したものだ。

 CAFは、ミャンマーがトップの理由は、国民の大半が仏教徒で喜捨が盛んなことを反映、としている。ミャンマーの仏教は、日本の密教の源流である南方上座部仏教。インドからスリランカ、タイ、ミャンマーへと伝播した上座部仏教は、チベットから中国を経て我が国にもたらされた禅宗など「大乗仏教」とは違い、日々の信心にもとづく喜捨精神がおう盛とされる。

 最近、世界で問題視されている、ミャンマー国内で少数民族として認知されていないイスラム教徒の「ロヒンギャ族」に対する人権侵害、それによるロヒンギャの隣国バングラデシュへの避難・難民化といった事態に対し、CAFは、この指標はあくまで一般大衆の喜捨だけを測定したものとしている。

 11位以降は、英国、シオラレオネ、マルタ、リベリア、アイスランド、タイ、イラン、ザンビア、ドイツ、ノルウェーの順。日本は111位だ。個別項目で見ると、金銭の寄付で46位、ボランティア活動で73位、人助けで135位だ。

 日米英3カ国の個人寄付総額(会費を含む)では、日本ファンドレージング協会「寄付白書2015」(2014年実績)によると、日本が7409億円であるのに対し、米国が約27兆3504億円、英国が約1兆8100億円と規模が違う。個人寄付総額の名目GDPに占める割合も、米国が1.5%、英国が0.6%なのに対し、日本は0.2%に過ぎない。

 内閣府の2013年度「市民の社会貢献に関する実態調査」によると、寄付額の分野別では、日米英とも宗教関係が多いようだ。日本では東日本大震災など大災害時には義援金が多くなるが、平時には寄付金額が落ちてしまう。同協会は8日に2017年版の寄付白書を出すとしているが、16年は熊本地震で寄付総額は増えたと見られる。ちなみに、法人寄付総額は同白書によると、2013年度で6986億円(42万法人)だった。

 では、なぜ、日本の個人の寄付金総額は少ないのか。内閣府の上記調査は、寄付理由・寄付の妨げになる要因として、①寄付した相手は、赤い羽根共同募金・日本赤十字社が過半数を占める②社会の役に立ちたくて寄付をする人が多い一方、自分が支援したい団体などに対する寄付は少ない③情報不足や信頼度の低さ―をあげている。

 確かに、赤い羽根共同募金、地域歳末たけあい募金、NHK歳末たすけあい募金の総額は16年度で181億4426万円。日本赤十字社の一般会計決算歳入の部における会費・寄付金などは約228億2000億円で、歳入の51 %を占める。

 日本赤十字社が中心になって集める災害義援金分約39億3000億円を合わせると歳入の60%を占める。個人寄付を行う割合の年代別で、男女とも年齢が高いほど割合が高くなるのは、町内会などのネットワークを生かして、寄付を募っていることが大きいと見られる。世帯ベースの寄付金額では災害時を除き、年間約3000円程度という。

 海外の団体に対する寄付額では、ユニセフが圧倒している。募金活動を行う日本ユニセフ協会(国内委員会)は自前のビルを東京・高輪に持ち、広報宣伝活動は、他のNPO(民間非営利団体)がうらやむほど大規模かつ多様な展開を見せる。

 ユニセフ募金総額(2016年)は176億3107万円。うち、個人が88%、他は企業・団体・学校からだ。ユニセフは、カード会社からの名簿提供を受けて新規の募金者を集めたり、寄贈プログラムなども早くから展開したりしている。

 多様な海外支援が必要とされる時代に、ユニセフの「独り勝ち」は何とも異様だ。2000年に、NGO(非政府組織)、経済界、政府が連携して、緊急人道支援の迅速・効果的な実施を目的に設立した「ジャパン・プラットフォーム」の認知をもっと進めるべきと思う。

 近年では、ICT(情報通信技術)などを利用した、多様な募金形態が見られている。電話のダイヤル募金、社員などの募金に企業が上乗せするマッチングギフト、クリック募金、ツイッター募金なども活用されている。

 Regaty(レガティ、福岡市城南区)のように、ボランティア団体の活動支援へ寄付付きTシャツ販売を行う会社も設立されている。プロジェクト実施でクラウドファンディング利用も目立ってきた。

 歳末たすけあいの時期。寄付と控除税制、税額控除を受けられる寄付先である認定NPOの資格審査の厳しさ、3者が突出するいびつな寄付構造などを考えながら、寄付をしてみてはいかがだろうか。
(中村悦二)
日刊工業新聞2017年12月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
胸スポンサーをずっと付けない主義を通してきたスペイン・サッカーの人気チーム、FCバルセロナ。2006年にそれを破ったのがユニセフ。広告費を受け取るのではなくバルセロナが児童福祉に寄付するという仕組み(当初年間150万ユーロ)。もちろんバルセロナのブランディングの一環という見方もできるが、企業やスポーツクラブなどももっと賢い寄付の仕方があるはず。

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