元グーグル副社長・村上憲郎氏から見た「Googleが考える近未来」

「IoT、ビッグデータ、AI、が切り拓くスマートコミュニティ」基調講演より

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**直接埋め込む「インプランタブル」の時代からサイボーグへ
 今年はちょうど「ウインドウズ95」が出てきて20年という節目の年。今やモバイルでどこからでもインターネットにアクセスできる。それが昨年くらいからウエアラブル、身につけるという時代へ突入した。先鞭を切ったのは米グーグル。「グーグルグラス」を発売し、着々と準備をしているようにみえる。

 これは基本的にいうと「オーグメンテッド・リアリティー」。拡張現実と呼ばれるアプリケーションを最適にこなすデバイスだ。この拡張現実というと、携帯電話の時代に頓智ドットコム(現tab)がセカイカメラで一世を風靡した。携帯のカメラで撮った画像に対して、クラウド側にある情報を上書きしてみせていくという形で、現実を拡張して提示する。それを眼鏡型のデバイスで直接的に目に対して施していこうというものだ。

 スマートメガネは発表以来、具体的な販売というところで手こずり、その間隙を縫うようにして、スマートウォッチというウエアラブルのほうが出てきた。形状としては腕時計型のデバイスだが、小ぶりのスマホが腕時計のように腕に巻かれているようなもので、アイフォーンやアンドロイド端末をカムテープで巻きつければスマートウォッチだともいえる。そうでないところがあるとすると、肌に密着していること。いわゆるヴァイタルシグナル、生体信号、体温、血圧、脈拍なおがクラウド側で取得可能になったというところが重要なポイントだ。

 この先が一体何なのかということだが、それはインプランタブル。顎に直接、入れ歯を埋め込むというのをインプラントという言葉になじみがあるかと思う。インプランタブルは、埋め込めるということ。グーグルから「グーグルコンタクトレンズ」というものが出ている。これはウエアラブルだろうが、インプランタブルへの橋渡しだ。通常のコンタクトレンズのサイズで、中に回路が入っている。糖尿病を患っている方への特殊なデバイスで、涙を分析して血糖値を測定するというものだ。

 拡張現実で「グーグル目玉」や「グーグル耳」が登場!?

 ウエアラブルからインプランタブルへの動きがどうなってくるかというと、まず身体健常者の機能補強である。オーグメンテッド・リアリティーというのは、別に目が不自由な方向けというよりは、我々が通常みている現実に対して新しい情報を上書きするのだ。一方で長い間、医師やエンジニアが、体に障害を持っている方々の機能回復ということに利するデバイスの開発に苦心している。その動きと将来は融合してくる。「グーグル目玉」とか、「グーグル耳」みたいなものが出てくるだろう。当然、想定される次の技術的なブレークスルーは、神経系統との結合という課題に直面する。それは、サイボーグという方向性を指し示すことになる。

 サッカーの例では、脳波を分析し、下肢の外側につけた外骨格の機械に対して指令を伝えて、立ち上がる、左足を出す、右足を出す、ボールを蹴るというようなことを実現しようという試みがある。この脳から機械へ指令を伝えていくという仕組みに必要な技術がブレイン・マシン・インターフェース(BMI)だ。皮肉なことに、Mのところというのはマッスルであれば、よりいいはず。

 例えば脊椎を痛めて脳の指令が足に伝えられない場合は、足を失っているわけではないので、できればブレーンからマッスルに、もう一度、脊椎を通さずして指令が伝えられたらいいのでは、ということになる。それには課題があって、直接というわけにはいかずファンクショナル・エレクトリカル・スティミュレーション(FES)という仕組みを使う方向で考えられている。だから具体的にはBMIではなく、ブレイン・マシン・マッスル・インターフェースということになる。

 重要なのは、動作に対するフィードバックだ。例えば我々は物を持ち上げる時に、固いからこう持つ、柔らかいからこう持つと目でフィードバックを得て手かげんを調整しているが、暗闇でも我々の手はちゃんと動くわけだから、義手をつくるとき、やはり義手の指先の触圧をフィードバックとして得るといった形で、双方向性をもったBMIが必要となる。その結果として、徐々にサイボーグという方向性が実現されていくということになると思う。

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明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

以前、グーグルの日本法人の社長を務めた某氏が「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」という本を出した。でもグーグルのことなら「そうだ、村上さんに聞いてみよう」である。

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