風力発電のコスト低減で最も有効な手段とは?

日立がIoTで風車の故障診断

 風力発電でもIoT(モノのインターネット)の活用が始まった。日立製作所は、IoTを駆使した遠隔からの故障予兆診断を実現している。風車の故障予兆の発見は難しく、日立は国内最大手メーカーならではのノウハウを生かしている。IoTによる遠隔監視は、海外に比べて高い日本の風力発電のコスト低減の切り札として期待されている。

 「自然が相手なので負荷が読めない。工場の設備とは違う」。日立自然エネルギー発電運営部の川島秀之主任技師は、風力発電の故障予兆検知の難しさを語る。

 工場のIoT化では、生産設備に取り付けたセンサーから稼働情報を集め、故障の予兆を見つける。正常値を外れたデータや普段と違う挙動が検出されると故障が起きそうだと警報を出す。

 日立は風車1基から風量、風速、増速機や発電機の振動、温度、電気などの膨大なデータを集める。ただし「正常値」の設定が難しい。強風が吹き続ける日があれば、吹く、やむを繰り返す日もあり、風車にかかる負荷は一定ではない。

 そこで強みとなるのが「風車メーカーのノウハウ」(川島技師)。日立は風車を設計・製造する知見から、異常なデータや挙動に精通する。計測データから現地の風況も学習し、風車ごとに正常値を設定している。稼働中、異常データがあらわれると社内の専門家が協議し、修理が必要かどうかを判断する。

 故障の予兆をつかめれば交換部品や作業員を計画的に手配でき、発電停止期間を短くできる。発電事業者は売電収入の減少を最小にできる。

 日立はIoTによる遠隔監視を保守サービスとして提供しており、納入した風車の約160基にほぼ標準的に採用した。太陽光発電ではメーカーと保守事業者が違うことも珍しくない。風車メーカーは数社しかなく、風力発電を知り尽くした日立は保守事業でも差別化できる。

 日本の風力発電の導入量は330万キロワット。5億キロワットに達した世界との差が大きい。要因が高いコストだ。日本の風力発電が1キロワット時の電気を作る発電コストは約14円で、海外より約5円高い。

 遠隔監視は、風力発電のコスト低減につながる。日本風力発電協会は2030年に海外並みのコストを目指しており、遠隔監視だけで1・69円の低減を見込む。故障による停止が減り、発電量が増えるためだ。

 日立は16年秋、風力の保守人材を育成するトレーニングセンターを埠頭工場(茨城県日立市)に開設した。実際の機器を使って作業の要所を学べる。IoTを活用した保守の効率化と、作業者の技能向上で風力発電の普及を支える。
(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年12月4日

松木 喬

松木 喬
12月08日
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日本風力発電協会の試算では長寿命化(20年→25年)・マイナス1・88円、CMS採用(遠隔監視)による稼働率・設備利用率向上・マイナス1・69円、メンテナンス効率化・マイナス1・28円、それぞれコスト低減が見込めます。単純に言えば、保守をしっかりして長持ちさせると合計4・85円の低減です。風車がたくさん建てば保守が重要となります。保守の価値を訴えていく必要があります。

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