出遅れる日本の洋上風力。巻き返しは可能か
発電設備メーカーは海外で受注相次ぐ
三菱重工業とデンマークのヴェスタスの合弁会社、MHIヴェスタス・オフショア・ウィンドは、ドイツで最大出力8000キロワット級の洋上風力発電設備56基を受注した。受注額は数百億円規模とみられる。デンマークのドン・エナジーが計画する出力45万キロワット級の「ボークム・リフグルンド2」プロジェクト向けで、2019年の据え付け開始を計画する。
同プロジェクトは、ドイツの北海岸から北西約57キロメートルの洋上で進められている。発電を通じてドイツ国内の46万世帯に電力を届ける。
納入する発電設備「V164―8・0MW」は、定格8000キロワットで世界最大出力を持つ。今回の受注契約には5年間の保守サービスも含まれる。
ドン・エナジーからはこれまで、英国で2件の受注実績があり今回で3件目。同社から受注した設備の総発電出力は100万キロワットを超えた。
政府は7月1日に施行する改正港湾法で、港湾への洋上風力発電施設の導入円滑化を後押しする。港湾管理者が発電事業者の事業計画を公募する制度を導入。認定すると20年間の事業が可能になる。従来は最大10年間のため、事業者は長期的な展望に立った事業を運営できるようになる。一方、港湾管理者は多くの事業者から優れた計画を選定できる。政府が再生可能利用エネルギーの導入拡大を進める中、港湾への洋上風力発電施設の設置が活発化しそうだ。
国内の多くの港湾は貨物の取り扱いが主体のため、少し前までは洋上風力の設置を歓迎しなかった。ただ、2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入拡大が重要課題に浮上。その一つとして洋上風力発電が注目される中、港湾への設置が見直されてきた。
例えば、大量に電力を消費する工場は港湾部に立地している場合が多い。一方、発電所の多くも港湾部に立地する。港湾に洋上風力発電施設を設置すれば、電力系統に接続しやすい距離にあり需要者に供給しやすい。こうしたいくつかの利点が分かってきたため、「今は港湾に設置した方がいいと変わってきた」(国土交通省)という。
ただ、むやみに港湾に洋上風力を導入しても、船舶の出入りをはじめとする本来の港湾機能に支障が出る恐れがある。共有財産である海上部分を長期間にわたり「占用」する以上、事業者を適切に選定する必要がある。
こうした認識を踏まえ、改正港湾法では、長期間に港湾区域を占用する洋上風力発電の設置に関する手続きを定めた。具体的には、港湾管理者が指針を策定し、それに基づき事業者を公募する。事業者は事業計画を提出する。この計画が認定されれば20年間の事業が可能になる。
現在、洋上風力が稼働している港湾は国内で数カ所程度にとどまる。鹿島港(茨城県)や御前崎港(静岡県)など、いくつかの港湾では同施設の設置を計画し、すでに事業者を選定している港湾もある。
今後は改正港湾法に基づき、事業者を選定する港湾も出てきそうだ。国土交通省はこれまでに港湾での洋上風力発電の導入に向け、技術的な判断基準となる技術ガイドラインを策定。1日には改正港湾法の施行と合わせ、洋上風力の占用条件などをまとめた運用指針も公表する。国交省は「従来の港湾機能と調和して円滑に進むことを期待する」としている。
(文=村山茂樹)
同プロジェクトは、ドイツの北海岸から北西約57キロメートルの洋上で進められている。発電を通じてドイツ国内の46万世帯に電力を届ける。
納入する発電設備「V164―8・0MW」は、定格8000キロワットで世界最大出力を持つ。今回の受注契約には5年間の保守サービスも含まれる。
ドン・エナジーからはこれまで、英国で2件の受注実績があり今回で3件目。同社から受注した設備の総発電出力は100万キロワットを超えた。
日刊工業新聞2017年1月18日
政府が法整備で後押し
政府は7月1日に施行する改正港湾法で、港湾への洋上風力発電施設の導入円滑化を後押しする。港湾管理者が発電事業者の事業計画を公募する制度を導入。認定すると20年間の事業が可能になる。従来は最大10年間のため、事業者は長期的な展望に立った事業を運営できるようになる。一方、港湾管理者は多くの事業者から優れた計画を選定できる。政府が再生可能利用エネルギーの導入拡大を進める中、港湾への洋上風力発電施設の設置が活発化しそうだ。
国内の多くの港湾は貨物の取り扱いが主体のため、少し前までは洋上風力の設置を歓迎しなかった。ただ、2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入拡大が重要課題に浮上。その一つとして洋上風力発電が注目される中、港湾への設置が見直されてきた。
例えば、大量に電力を消費する工場は港湾部に立地している場合が多い。一方、発電所の多くも港湾部に立地する。港湾に洋上風力発電施設を設置すれば、電力系統に接続しやすい距離にあり需要者に供給しやすい。こうしたいくつかの利点が分かってきたため、「今は港湾に設置した方がいいと変わってきた」(国土交通省)という。
ただ、むやみに港湾に洋上風力を導入しても、船舶の出入りをはじめとする本来の港湾機能に支障が出る恐れがある。共有財産である海上部分を長期間にわたり「占用」する以上、事業者を適切に選定する必要がある。
こうした認識を踏まえ、改正港湾法では、長期間に港湾区域を占用する洋上風力発電の設置に関する手続きを定めた。具体的には、港湾管理者が指針を策定し、それに基づき事業者を公募する。事業者は事業計画を提出する。この計画が認定されれば20年間の事業が可能になる。
現在、洋上風力が稼働している港湾は国内で数カ所程度にとどまる。鹿島港(茨城県)や御前崎港(静岡県)など、いくつかの港湾では同施設の設置を計画し、すでに事業者を選定している港湾もある。
今後は改正港湾法に基づき、事業者を選定する港湾も出てきそうだ。国土交通省はこれまでに港湾での洋上風力発電の導入に向け、技術的な判断基準となる技術ガイドラインを策定。1日には改正港湾法の施行と合わせ、洋上風力の占用条件などをまとめた運用指針も公表する。国交省は「従来の港湾機能と調和して円滑に進むことを期待する」としている。
(文=村山茂樹)
2016年7月1日