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長崎から航空機の降着を支える縁の下の力持ち、狙うは世界

ピーエヌ機電の「ブッシング」、取引先と連携し海外開拓へ
長崎から航空機の降着を支える縁の下の力持ち、狙うは世界

加工した部品を確認。現場ではペーパーレス化にも取り組む

 飛行機の足元を支える縁の下の力持ち―。ピーエヌ機電(長崎県時津町、橋本進社長)は、航空機の降着装置に使われる部品を製造する。約20年間、航空機産業向けでは同部品に特化。生産量は21万個を超えているという。

 製品は降着装置に使う「ブッシング」と呼ばれる大小さまざまな部品。全日本空輸が運航する「ボーイング777」などが採用。部品と部品の結合部に使われる。素材は難削材の合金。素材の応力が高ければ比例して歪みが生じやすいという特徴を持つ。そこで取引先と相談し、素材の形状や表面処理などの加工手順を変えるなどの工夫で対応してきた。

 2017年度から主要取引先との連携を強化している。その一環で4月から始めたのが素材の調達方法の変更。そのため新たに素材倉庫を敷地の一角に設置した。従来の調達は特殊合金メーカーの大和合金(東京都板橋区)から機体整備を実施するSPP長崎エンジニアリング(長崎県諫早市)を経由してピーエヌ機電が受け取る流れだった。

 効率を高めるため三者で話し合い、大和合金から直接受け取り、倉庫に保管するようにした。その結果、計画生産の実施や在庫管理の業務が低減。ピーエヌ機電は1機ごとに素材を受け取りに行く手間が省け、受託量の拡大が期待できるなど三者にメリットが生まれた。

 今後は従来の国内機だけでなく海外機や格安航空会社(LCC)の取り込みが可能になる。SPP長崎エンジニアリングが欧州航空安全局(EASA)の二次委託先認証を取得したためだ。

 受託増加に備え、人材育成に力を入れる。現場担当者は「かみくだいて作業を教え最適な段取りを可能にしたい」と意気込む。製造部品と同じく足腰を強化してさらなる飛躍を狙う。航空機の整備・修理(MRO)市場は拡大が予想される。橋本社長は「主要取引先との連携を図り、海外機も取り込みたい」と意欲を燃やす。
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2017年11月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
社名の「ピーエヌ」はフェニックス(不死鳥)のスペルから。プレス加工とマシニング加工を手がけ、航空機以外ではモーターや発電機に使われるコアの打ち抜き加工を主力とする。九州経済連合会のQAN(九航協エアロスペース・ネットワーク)に参加しており、九州のクラスターの一員として活動している。 (日刊工業新聞西部支社・増重直樹)

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