パワー半導体にもEVの波がやって来た!

各社、SiCに走り出す

 パワー半導体各社が攻勢を強めている。家電や産業機器向けの市場が好調に推移するほか、今後は電気自動車(EV)化の進展で需要が一段と膨らむ見通し。次の成長の柱となる「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」を武器に、効率化や小型化を訴求し市場を深耕する構えだ。各社は、この新潮流をつかめるか。

 最も強気な設備投資を表明するのは、富士電機だ。同社は5月に100億円規模の増産投資を決めたのに続き、11月にも170億円の追加投資を発表。2017―20年度で500億円規模の投資を行う方針だ。宝泉徹執行役員は「計画は上振れ気味。見通しは堅調だ」と自信を見せる。

 パワー半導体市場の先行きは明るい。富士経済(東京都中央区)は市場が25年に16年比31・2%増の3兆1799億円になると予測する。

 成長を支えるのは自動車。モーター制御に不可欠なパワー半導体は、EV化により需要が大きく伸びる。同社の宇陀良弘主任は「世界的なEV化の流れで、需要が前倒しされている」と指摘する。

 各社の目はすでに次をとらえている。それがSiCパワー半導体だ。現在普及するシリコン製よりもエネルギー効率が高く、インバーターなどを小型化したり、電力損失を減らしたりできる。富士経済は25年のSiCパワー半導体市場が16年比6・9倍の1410億円まで広がると予測する。

 足元では、市場拡大の主役となる自動車向けの採用が本格化してきた。中国によるEV振興に加え、欧州を起点にEV化の波が押し寄せる。

 英IHSマークイットの南川明主席アナリストは「SiCパワー半導体市場は急速に立ち上がろうとしている」と分析する。パワー半導体メーカー幹部も「17年に入り、自動車メーカーからの要求がより具体的になっている」と打ち明ける。

 各社もこのタイミングを逃すまいとSiCのビジネスに拍車をかける。その象徴が生産能力の強化だ。パワー半導体最大手の独インフィニオン・テクノロジーズや、三菱電機、東芝はSiCの生産ラインで従来の直径4インチ(100ミリメートル)ウエハーから同6インチ(150ミリメートル)への切り替えを加速。三菱電機の花岡尚夫半導体・デバイス第一事業部長は「歩留まり改善のレベルは、どんどん向上している」と胸を張る。

 ロームもSiCパワーデバイス関連で26年3月期までに計200億円を投じ、生産能力を17年3月期比7倍に引き上げる。需要が好調なため、投資計画は前倒しされる見込みで、6インチ化にも本格的に取り組み始めた。

 一方、富士電機は今後1―2年かけて、SiCパワー半導体の製品ラインアップを拡充する計画。宝泉執行役員は「市場が本格的に立ち上がる20年以降に、少なくとも20%程度のシェアは取りたい」と意気込む。

 最大の課題は、シリコンに比べて数倍とも言われるコストだった。しかし富士経済の宇陀主任は「大口径化が本格化することで価格は下がっていくだろう」とみる。普及への追い風は吹いている。
                     

日刊工業新聞2017年11月27日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
12月03日
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パワー半導体は技術のすりあわせが品質や性能に大きく影響するため、技術力が競争力に直結する。現在は、独走するインフィニオンを各社が追う展開だが、勢力図が塗り変わる可能性もある。EV化の流れを契機に、新たな競争の火ぶたが切られた。

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