歴史建造物の修復技術がスゴい!明治神宮はメッシュシートで外観を再現
清水建設、実物大の南神門に写真プリント
実は工事中です―。清水建設は明治神宮(東京都渋谷区)の南神門の修復工事で、実物大の南神門の写真をプリントしたメッシュシートを設置(写真)し、工事現場を思わせない外観を再現している。実際の南神門は工事用の足場で囲まれているが、足場の外面に張り巡らせたワイヤに、分割した南神門の合成写真を結び付けた。
南神門の正面を覆うプリント・メッシュシートは幅20×高さ14メートル。製作方法は最初に南神門の外観写真を距離やアングルを変えて撮影し、写真データをデジタル処理・合成。メッシュシートの基本モジュール(縦5・1×幅1・8メートル)に、外観の合成写真を45枚に分割してプリントした。
南神門は9月末まで、このメッシュシートに覆われている。今後予定している社殿の修復工事でもメッシュシートを活用し、本物同様の外観を再現する予定。
4月の熊本地震で石垣の倒壊など、大きな被害を受けた熊本城(熊本市中央区)。修復には伝統的な技能や、現在の技術などの結集が必要だ。こうした中、大手ゼネコンはこれまでに傷んだ石垣の修復を手がけてきた実績がある。例えば、清水建設は唐津城(佐賀県唐津市)や江戸城跡(東京都千代田区)などの石垣を修復した。鹿島は2011年3月の東日本大震災で被災した小峰城(福島県白河市)の石垣修復を手がけた。大手ゼネコンの城の石垣における修復手法をみてみる。
清水建設は09年8月―15年3月に、唐津城の石垣の解体・修復工事を実施した。活用したのが、3次元(3D)で形状を表現できるモデリング技術「コンストラクション・インフォメーション・モデリング(CIM)」だ。
まず、解体する前に石垣全体や個々の石材の形状を、3Dレーザーやデジタルカメラで測量・撮影する。その後、石垣の形状をCIMで3Dモデル化。石垣の角部の石は積み方を詳細に検討するため6面体で、石垣表面部の石は3Dで表す。
設計者や石工などが3D化した石垣を見ながらシミュレーション技術を用い、築石の配置を検討する。当時の石垣の勾配や線形を考慮。画面上で配置した石の干渉状態を計算し、微調整して積み上げる。シミュレーション後に施工する。
現在の技術であるCIMと石工の伝統技能を融合し、シミュレーションで施工を大幅に効率化した。収集したデータは技能伝承や維持管理に活用できる。
(3Dで石垣を修復=修復後)
一方、事前にデータ計測できず石垣が崩落した場合は、小峰城の復旧工事の経験が生きるかもしれない。鹿島は13年9月から、東日本大地震で被災した小峰城の14カ所の石垣修復工事を担当している。石垣が崩れてしまったので、手がかりは崩落前の写真や書物だ。
まず、崩れた石材一つひとつに通し番号を振り、写真撮影する。そこから石材の輪郭をCADで描き、崩落前の複数の石垣の写真と照合しながら、石材を組み合わせて施工図を作成。石材の配置を検討し、仮積みを行った上できちんと積み上げる。
重要なのが「元の形に復元すること」(白河市建設部都市政策室)。文化財である城の石垣の修復は原則、元の場所に元の石を配置する必要がある。修復工事は続いているが、完成部分は「市民が修復以前と同じと実感している」(同)という。
熊本城の復旧には、まだ時間がかかる。新旧の技術や工法を駆使し、再びその雄姿が見られることを期待する。
(文=村山茂樹)
南神門の正面を覆うプリント・メッシュシートは幅20×高さ14メートル。製作方法は最初に南神門の外観写真を距離やアングルを変えて撮影し、写真データをデジタル処理・合成。メッシュシートの基本モジュール(縦5・1×幅1・8メートル)に、外観の合成写真を45枚に分割してプリントした。
南神門は9月末まで、このメッシュシートに覆われている。今後予定している社殿の修復工事でもメッシュシートを活用し、本物同様の外観を再現する予定。
城の石垣、石工の伝統技能と3D技術を融合で
4月の熊本地震で石垣の倒壊など、大きな被害を受けた熊本城(熊本市中央区)。修復には伝統的な技能や、現在の技術などの結集が必要だ。こうした中、大手ゼネコンはこれまでに傷んだ石垣の修復を手がけてきた実績がある。例えば、清水建設は唐津城(佐賀県唐津市)や江戸城跡(東京都千代田区)などの石垣を修復した。鹿島は2011年3月の東日本大震災で被災した小峰城(福島県白河市)の石垣修復を手がけた。大手ゼネコンの城の石垣における修復手法をみてみる。
清水建設は09年8月―15年3月に、唐津城の石垣の解体・修復工事を実施した。活用したのが、3次元(3D)で形状を表現できるモデリング技術「コンストラクション・インフォメーション・モデリング(CIM)」だ。
まず、解体する前に石垣全体や個々の石材の形状を、3Dレーザーやデジタルカメラで測量・撮影する。その後、石垣の形状をCIMで3Dモデル化。石垣の角部の石は積み方を詳細に検討するため6面体で、石垣表面部の石は3Dで表す。
設計者や石工などが3D化した石垣を見ながらシミュレーション技術を用い、築石の配置を検討する。当時の石垣の勾配や線形を考慮。画面上で配置した石の干渉状態を計算し、微調整して積み上げる。シミュレーション後に施工する。
現在の技術であるCIMと石工の伝統技能を融合し、シミュレーションで施工を大幅に効率化した。収集したデータは技能伝承や維持管理に活用できる。
(3Dで石垣を修復=修復後)
一方、事前にデータ計測できず石垣が崩落した場合は、小峰城の復旧工事の経験が生きるかもしれない。鹿島は13年9月から、東日本大地震で被災した小峰城の14カ所の石垣修復工事を担当している。石垣が崩れてしまったので、手がかりは崩落前の写真や書物だ。
まず、崩れた石材一つひとつに通し番号を振り、写真撮影する。そこから石材の輪郭をCADで描き、崩落前の複数の石垣の写真と照合しながら、石材を組み合わせて施工図を作成。石材の配置を検討し、仮積みを行った上できちんと積み上げる。
重要なのが「元の形に復元すること」(白河市建設部都市政策室)。文化財である城の石垣の修復は原則、元の場所に元の石を配置する必要がある。修復工事は続いているが、完成部分は「市民が修復以前と同じと実感している」(同)という。
熊本城の復旧には、まだ時間がかかる。新旧の技術や工法を駆使し、再びその雄姿が見られることを期待する。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2016年6月20日/7月26日