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【再生エネ後進国・日本#03】1兆円の経済波及効果も、規制に阻まれる風力

潜在的な経済価値を認めゾーニングなどの採用を
 世界でもっとも導入量が多い再生可能エネルギーが風力発電だ。海外の専門誌「ウインドパワーマンスリー」によると全世界の導入は5億キロワットに達した。これは日本の全発電設備の1・7倍に相当する。

 日本の風力の導入量は330万キロワット。出遅れた理由の一つが規制だ。建設前に環境影響評価(アセスメント)が必要なため開発に3―5年かかり、大手企業以外は投資意欲が沸きにくい。

 電力系統への接続も問題だ。一部の送電網では、再生エネの電気を受け入れる容量がなくなった。国は解決策として「コネクト&マネージ」の導入を議論している。コネクト&マネージとは再生エネの接続を優先し、管理で電力需給を調整する欧州流の系統運用ルールだ。

日本風力発電協会専務理事・中村成人氏に聞く


 ―開発期間の長さが普及の足かせと指摘されています。
 「どうしたら環境アセスを短縮できるのか、提言していきたい。現状は1万キロワット以上が対象なので、風車を3、4本建てるとアセスが必要となる。業界としても自主アセス指針を作った。開発期間半減を目指したい」

 ―洋上風力への期待は大きいですが、設置が進んでいません。
 「海外では政府が建設地を指定し、住民など利害関係者と調整するゾーニングが行われている。民間は建設から入るので開発期間が短い。日本でも採用してもらいたい」

 ―風力の発電コストは約14円(1キロワット時)。協会は2030年までに現状の世界平均の8―9円を目指しています。
 「量産化効果である程度まで下げられる。量を増やすために政府には明確で野心的な目標を示してほしい。30年の見通しが1000万キロワットでは、事業者や金融が『日本に風力の市場あり』と思って投資してくれない」

 ―量産以外のコスト低減方法は。
 「技術革新だ。羽根の直径を長くする大型化は、発電を増やせるので発電コスト低減に効く。適切な保守による長寿命化や故障の防止も有効だ。IoTやAI利用によって保守費も下げられる」

 ―電力系統への接続問題の解決は。
 「系統運用にコネクト&マネージを採用してほしい。国でも議論が始まっており、我々と方向性が合っている。最新の風車は遠隔から出力調整ができる機能がある。コネクト&マネージに向いており、導入量を増やせる」

【記者の目】
 日本風力発電協会は30年に3620万キロワットの導入が可能とする。30年時点で1兆円の経済波及効果、7万人以上の雇用創出を見込む。定期的に発生する交換部品の製造拠点が地域にできれば、地方創生にも寄与する。国には、潜在的な経済価値も含めて風力の導入拡大を議論してほしい。
(松木喬)
日刊工業新聞2017年11月3日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「国プロ」として注目された洋上風力は、遅々として進んでいません。中村さんのお話にありました、ゾーニングを日本も検討したらどうでしょう。政府が地元と調整しておいてくれたら、民間は開発期間を短縮できます。秋田では県が県有地を開放することで風力の設置を増やしている事例があります。

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