【再生エネ後進国・日本#01】“生態文明”掲げリーダーに躍り出た中国

高コストが普及のネックに

 日本は再生可能エネルギー後進国なのか―。最近、このような論調が目に付く。化石資源に依存しない“脱炭素”社会を目指す「パリ協定」が2015年末に採択されると世界各地で再生エネの導入が加速され、中国が再生エネのリーダーとなった。対照的に日本では再生エネの弱点ばかり指摘され、世界から取り残されはじめた。日本の再生エネ大量導入の道筋を探る。

 18日、中国共産党大会で習近平総書記は演説し、「生態文明」という言葉を10回以上使った。環境対策のスローガンとして使われる言葉だ。いま中国は深刻な大気汚染を克服しようと、再生エネ普及に本腰を入れている。

 仏シンクタンク「REN21」がまとめた「自然エネルギー世界白書」によると、16年は世界全体で7500万キロワットの太陽光発電が導入され、その半分の3450万キロワットが中国に設置された。しかも16年の中国の勢いは驚異的で、1年間で累計導入量を1・4倍の7740万キロワットに押し上げ、2位の日本に倍近い差をつけて世界首位に立った。

 風力も世界最大だ。「世界風力会議」によると中国にある風力発電の能力は、世界全体の34%に当たる1億6873万キロワットとなっている。

 政府主導で石炭火力への規制も強めている。13年、大気汚染対策として石炭消費総量の削減制度を導入、北京など主要都市に削減義務を課した。代わって20年までに太陽光を1億1000万キロワット、風力を2億1000万キロワットへと拡大する。

 16年の全世界の再生エネ投資は2416億ドルで、5年連続で火力発電の倍となった。主要国の電源に占める再生エネ比率もドイツ27%、英国20%、フランス16%と上昇。日本は14%で、出遅れ感がある。

 自然エネルギー財団とNGO「CDPジャパン」の共催セミナーが25日、都内で開かれ、経済産業省の担当者、再生エネ事業者らが登壇した。議論の中で「高コストが普及への課題」との認識で一致した。

 建設費、燃料費などの合計コストを比べる指標として発電コストがある。日本の太陽光が1キロワット時の電気を作る発電コストが21円。ドイツやフランス、中国のほぼ倍だ。

 ソフトバンクグループなどがインドで3月に稼働させたメガソーラーは、8円台で電力会社に売電する契約を結んだ。アラブ首長国連邦では3円を切る新規契約もあった。日照条件など場所によるが、太陽光は火力発電を下回るまでにコストが下がった。

 再生エネ発電所を運営する自然電力(福岡市中央区)の磯野謙社長はセミナーで「日本でしか調達できない機器は高い」と分析した。太陽光パネルは海外調達なので価格は抑えられる。しかし、発電所と送電線をつなぐ鉄塔など、国際競争にさらされていない機器や建設費がコスト低減の足を引っ張る。

 風力発電も海外とのコスト差が大きい。日本の14円は、海外の1・6倍の水準だ。磯野社長は「風車2基を建てるのに2年かかった。その間も資金投下を続けなければならなかった」と、開発期間の長さを嘆く。そもそも日本の風力発電の導入量は330万キロワット。世界は5億キロワットに達しており、日本の周回遅れは決定的だ。

 電力系統への接続問題も、日本の再生エネ普及の課題だ。北海道や東北では、送電網に再生エネ発電所の電気を受け入れる余裕がなくなりつつある。

 再生エネの導入目標が低いとの声もある。政府は、30年に再生エネ比率が22―24%になると見通している。経産省の山崎琢矢新エネルギー課長は「22―24%にとどめることは考えていない」と語り、拡大に意欲をみせる。課題ははっきりとしている。官民が知恵を出し合って解決すれば、再生エネ後進国の汚名を返上できる。
                     

日刊工業新聞2017年11月1日

松木 喬

松木 喬
11月04日
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COP23開幕、パリ協定発効1年に向けて準備していた連載ですが、すでに他紙・誌が特集しました。再生エネの導入に向けて課題はテーブルに出そろいました。連載初回ではコスト、接続問題、目標をあげましたが、次回以降で産業構造・ビジネスモデルの変革もとりあげます。原発の再稼働が実現しない現実を直視し、再生エネの普及を考えるきっかけにしたいです。

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