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アップルがサプライヤーに再生エネ導入呼びかけ。反応した日本企業は?

「RE100」参加88社で日本企業はゼロ。イビデンが呼びかけに応える
アップルがサプライヤーに再生エネ導入呼びかけ。反応した日本企業は?

アップルのティム・クックCEO

 事業で使う電力すべてを再生可能エネルギーで賄うと宣言した企業組織「RE100」への参加が88社となった。2014年に結成後、大企業が相次いで加盟した。中国やインド企業も名を連ねるが、日本からの参加はゼロ。メンバーの1社である米アップルはサプライヤーにも再生エネの導入を呼びかけており、日本企業も対応が迫られそうだ。

 8日、自然エネルギー財団(孫正義会長)が都内で開いたシンポジウムで、アップルは再生エネ比率が93%になったと報告した。登壇した同社環境政策責任者の一人、ケイティ・ヒル氏は国旗を示し、事業展開する23カ国で再生エネ100%を達成済みと公表した。だが、その中に日本の国旗はなく「日本では政策の問題があってできていない」とコメントした。

 RE100にはアップル、アップル、フェイスブックなど米IT企業に加えBMW、タタ・モーターズなど自動車、コカ・コーラやネスレなど食品メーカーが名を連ねる。アジアからは中国とインドの5社が参加する。すでにメンバーの11社が再生エネ100%を達成済み。加盟88社全体で1000億キロワット時以上の再生エネを利用し、日本全体の再生エネ発電量に匹敵する。

 RE100を主催するNGO「クライメートグループ」(本拠は英国)のダミアン・ライアン最高責任者代理は「リーダーのイニシアチブ(主導)」と強調し、参加が“世界のリーダー企業の証”と説明する。

 具体的な事業メリットも訴える。その一つがエネルギー費の抑制だ。石炭などの火力発電の電力価格は上昇する可能性がある。炭素税が導入されると二酸化炭素(CO2)排出もコストとしてのしかかる。再生エネは価格が下がっており、RE100の参加は「究極には経済性」(ライアン氏)が動機だ。

 すでに米ゼネラル・モーターズは再生エネの導入で年500万ドルを低減した。イケアのヘレン・フォン・ライス日本法人代表も「財務上のリスクを下げる」と明確に話す。

 アップルはサプライヤーにも再生エネの導入を呼びかける。すでにレンズやカバーガラスのサプライヤーが再生エネ100%化を目標とし、鴻海精密工業も再生エネの活用を進めている。

 日本のイビデンも呼びかけに応え、アップル向け製品の製造で消費する電力以上の太陽光発電を設置する計画だ。

 アップルは20年までに自社とサプライヤーを合わせ、原子力発電4基に相当する400万キロワットの再生エネ導入を目指す。アップルと取引する日本企業も多い。もし再生エネの導入で取引が決まるようになると、競争で不利となる。
                  

(文=松木喬)
日刊工業新聞2017年3月15日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
アップルは再生エネの活用を取引条件にしていませんが今後、再生エネを活用する取引先を優遇するようなことが起きても不思議ではありません。そのぐらい世界が再生エネにシフトしたと思います。日本のFIT制度では「再生エネ100%」はできません。電力会社が再生エネ発電所から電気を買い取る資金を、すべての国民の電気代に上乗せされている「賦課金」で賄っているからです(再生エネはすべての国民のもの)。

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