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最も権威ある環境評価で「Aリスト」に選出された日本の13社

称号は生かされているのか!?
最も権威ある環境評価で「Aリスト」に選出された日本の13社

17年のAリスト企業の社長、役員

 企業の環境評価でもっとも影響力のある指標「CDP」の2017年版が24日、世界同時に発表された。都内で開かれた報告会には、最優秀に選ばれた企業トップが登場した。年々、CDPへの注目が高まり、「環境先進企業」の称号を得たい企業が高評価を競う。”過熱気味”との見方もあり、評価を気候変動対策や経営にどう生かすかが問われている。

 気候変動対策の評価で2年連続で最優秀の「Aリスト」に選出された三菱電機の柵山正樹社長は、報告会で「事業を通して持続可能な社会に貢献する」と喜びを語った。富士通の谷口典彦副社長も「ICTで気候変動の緩和に貢献したい」と決意を表明。最優秀の”常連”ソニーの今村昌志執行役は「何かへの貢献なくして技術開発はない。ソニーは問題解決に創造と挑戦に取り組む」と語った。

 17年は日本13社がAリストに輝いた。全世界ではBMW、LGエレクトロニクス、ユニリーバなど111社がAリスト入りした。

 CDPは英国の環境NGO。企業の気候変動対策を比較できる情報を集めようと00年、前身のカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトが設立。投資家の要請を受ける形で企業に質問状を送り、回答を評価、公表する活動を始めた。17年は世界5000社以上に質問状を送付した。

 企業に回答義務はないが、欧州8割、米国6割が回答する。企業の背中を押しているのが投資家だ。欧米の803の投資機関がCDPを支持し、その運用資産の総額は100兆ドル(1京円)に上る。

 日本では大企業500社に質問状を送付している。16年は53%が回答し、初めて半数を超えた。CDP日本事務局の森澤充世ディレクターは「報告会に社長が来るようになってから、注目度が高まった」と振り返る。14年は日産自動車、ホンダ、東芝、住友林業の4社が日本企業で初めて100点満点を獲得。報告会に各社トップが駆けつけた。

 企業の環境担当者には「質問状を送りつけ、無回答なら最低評価と一方的に公開する」と批判もあったが、CDPを無視できなくなった。15年は日本の満点が25社に増加。点数の公表がなくなり、A-Dの段階評価だけとなった16年、日本22社がAリストに輝き、18社の役員が報告会に登壇した。

 森澤ディレクターは「Aは特別扱い」と言い切る。報告会に招かれるのも、報道されるのもAリストだけ。ただし「一喜一憂してほしくない」と語る。

 日本のAリスト企業でも、再生可能エネルギーの導入量では海外企業から引き離されている。「世界は前を走っている。追いつくためにスピードアップが必要」と訴える。

 またCDPが「投資家との対話ツールになる」と期待する。成長力を備えた企業を選ぶESG(環境・社会・企業投資)投資が広がっている。CDPは世界同一基準なので、投資家は企業を比べやすく、企業もPRしやすい。

「国内は過熱気味」。NTTデータ経営研究所の大塚俊和シニアマネジャーは、CDPの盛り上がりをこう表現する。気候変動が専門の大塚氏は、延べ100社にCDPの回答をコンサルティングしてきた。

 この経験から「競争原理が働いている。1社が高評価を獲得すると競合企業の上層部が気にし、環境担当者が追随する」と過熱の構図を解説する。回答の動機が”横並び意識”としたら、投資家に気候変動への取り組みを伝える本来のCDPの趣旨と乖離している。

「CDP」から「ESG」へ


 だが、状況が変わりつつある。ESG投資が台頭し「CDPに回答しないと投資家から評価されないと気づき始めた企業が少なくない」(大塚氏)という。

 CDPの質問も変化している。以前はCO2排出量の計測値など、情報開示の姿勢を問う内容が多かった。設問を理解して回答すれば得点を稼げ、高得点が可能だった。

 今は排出削減の長期目標、再生エネ導入目標など将来に向けた戦略を問う設問が増えた。ESGを重視する投資家には、CO2排出規制が強化されても成長を継続できる企業を選ぶ材料となる。

 企業も変化が迫られている。排出量の実績なら環境担当者だけで回答できたが、目標となると事業計画と関連するため経営層の関与が必要となる。

 大塚氏は「経営者は生き残る戦略を考えるきっかけになる」と指摘する。長期目標は気候変動が厳しさを増しても、経営を持続可能にする意思表明となる。逆に目標がないと気候変動リスクに鈍感とのレッテルを貼られる。

 次回の18年版から日本も欧米と同様、CDPへの回答は有料となる。お金を払って回答することに価値を感じられない企業は、やめた方がいいだろう。回答を続ける企業は、ESG投資や持続可能な経営にCDPを生かす必要がある。

 すでにCDPをステップにESGへと取り組みを広げている企業がある。アサヒグループホールディングスは15年と16年、気候変動対策でAリスクに選ばれ、泉谷直木会長が報告会に登壇することもあった。グループのCSRを支援するアサヒプロマネジメントの三谷千花マネジャーは「環境や社会問題に取り組む指標としてCDPを意識している」と語る。

 参考となるが質問だ。CDPは社会要請を反映し毎年、設問を変えている。新しい設問を通して、社会が求めていることを社内に伝えられる。調達先を含めたCO2量の収集と検証も、CDPをきっかけに取り組んだ。

 松香容子マネジャーは「ESGでもCDPを重視している」と語る。アサヒグループは中期経営計画の3本柱の一つに「ESG」を据えた。欧米企業は、サステナビリティ(持続可能性)をコミットするのが当然となっている。同社もESGに取り組み、持続可能性を追求する。

 毎月の社長朝礼でもESGを報告するなど、社員への浸透を進めている。松香マネジャーは「事業を通した社会課題解決への貢献を強化しようとしている。アサヒにしかできない事業を発掘したい」と語る。
日刊工業新聞2017年10月30日記事に加筆
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「狂騒曲」まで言うと大げさかもしれませんが、以前からCDPが気になっていて初めて記事をまとめました。回答には労力を必要です。苦労して回答して得た結果をどう生かすのか?また、18年から回答が有料になります。日本500社の回答率は下がるかどうかで、情報開示への本気度がわかると思います。

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