東芝半導体売却、思惑入り乱れた7カ月。対サムスンで一枚岩に

 東芝の半導体メモリー事業の売却は、24日に開く臨時株主総会で節目を迎える。7カ月かかった東芝の売却交渉は、東芝や金融機関、政府の思惑が入り乱れ、方針が何度も覆る主体性なきM&A(合併・買収)だった。結果として東芝は好条件で売却先を決めたが、この迷走劇は半導体事業会社「東芝メモリ」の運営に大きな懸念を残す。複数の船頭を乗せた「日米韓連合」の船の行く手にあるのは、新大陸なのか荒波なのか―。

覇者目指して


 13日、東芝メモリ四日市工場(三重県四日市市)で共同会見した東芝の成毛康雄副社長と、米ベインキャピタルの杉本勇次日本代表はがっちりと握手を交わした。NAND型フラッシュメモリー市場での覇者となるべく、今後、年間三千数百億円規模の投資を継続することで一致した。

 杉本日本代表は「基本的には現在の経営体制を存続し、事業運営をサポートしたい」と東芝メモリを尊重する姿勢をみせる。しかし連合内ではすでにほころびが見え隠れしている。

 「右往左往する様子を見ていると、今の(東芝の)経営陣でこの先もうまくやっていけるのか心配だ」―。経済産業省からはこんな声が聞こえる。

餅は餅屋


 市況変動が業績に大きく影響する半導体事業の運営には、機動的な判断が必要だ。かつ東芝メモリは投資ファンドや顧客、協業相手、金融機関など利害関係者が多く、かじ取りは難しい。マネジメントにたけた人材を、外部から招聘(しょうへい)すべきだとの意見が早くも出始めた。

 「すでに次期経営トップ候補のリストアップは始まっている」(関係者)。リストには過去の東芝半導体事業トップ経験者の名前も含まれているという。ただ、これには東芝内部から「過去の人を戻すのはどうなのか」との反発の声が挙がる。

 東芝には製造や開発の技術、販売ノウハウを積み上げ、NANDメモリー事業を世界2位までに育てた自負がある。「執行体制は現状維持で、ガバナンスの部分をベインに補足してもらうのがいい」(東芝関係者)。“餅は餅屋”で事業運営は東芝メモリ出身者が適しているとの主張だ。

三角関係


 次期経営体制は米ウエスタンデジタル(WD)との係争解消後の参画を視野に指図権を付与されている産業革新機構や、日本政策投資銀行の判断も影響する。東芝メモリの経営は微妙なバランスでのスタートとなる。

 売却交渉の長期化は結果的に、韓国サムスン電子にシェアを突き放される要因を作った。加えて東芝メモリはWD、韓国SKハイニックスとの“三角関係”をどう成立させるかという新たな課題も抱える。売却交渉の混迷を引きずることは、日米韓連合の空中分解を引き起こし、これから数年間は確実に成長が見込まれるメモリー市場の競争からの退場にもつながりかねない。

日刊工業新聞2017年10月19日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
10月22日
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「対サムスン」を軸に一枚岩になる―。東芝メモリの成功には関係者がこの思いを共有する必要がある。

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