EV普及のカギは走行中のワイヤレス給電?
東京大学大学院教授・堀洋一氏インタビュー
欧州を中心に世界で電気自動車(EV)導入機運が高まっている。自動車メーカーのEV開発も加速し、業界は産業構造の変革期を迎えつつある。EVの制御や充電技術に詳しく、経済産業省の「EV・PHVロードマップ検討会」の座長も務める東京大学大学院の堀洋一教授に、EV普及への課題や将来像を聞いた。
―EVシフトをどう捉えていますか。
「各国で二酸化炭素(CO2)排出削減の動きが広がっており、この流れに逆らうことは難しい。自動車の電動化は進むだろうが、米テスラのようなEV専業メーカーが注目されるうちは、EVは一般的な車とはまだ言えない」
―EV普及への課題は。
「航続距離の短さと、それに伴う充電の煩わしさだ。各社は高性能電池を開発し、ガソリン車と同じような航続距離とすることに力を入れているが、EVはガソリン車とエネルギー形態が異なる。EVが増えれば、充電器の設置数や電力も膨大となる。いずれは電気の特徴を生かした燃料供給の仕組み作りが必要だろう」
―具体的には。
「走行しているEVに無線で電気を送るワイヤレス給電が有力だ。停車時の短時間充電も組み合わせれば、車に大容量電池を積まずに快適な運転環境を実現できる。走行中ワイヤレス給電の設備を道路下などに埋設すれば、大容量電池を搭載したEVを普及させるよりも社会コストは小さく、リチウム(の枯渇)など資源リスクも避けられるはずだ」
―EVに置き換わることで自動車の魅力に変化はありますか。
「EVの最大の特徴は、モーターの優れた制御性を生かした走行性能の高さだ。EVになっても車を運転する楽しみは変わらない。自動運転やネットワーク接続性と親和性が高い点も魅力だ」
―今後のEVを取り巻く環境をどう見ますか。
「世界的にEVが普及する中で、市場に応じたユニークな商品開発が進むほか、近距離移動用のパーソナルモビリティーとしての活用がさらに広がる可能性もある。また家電メーカーの英ダイソンのような異業種からの参入やベンチャーの誕生も増えるだろう」
【記者の目】
EVが“普通の車”と認知されるにはまだ課題が多く、エンジン車から一気に置き換わることはないだろう。一方で、EVが次世代エコカーの有力な選択肢であることも事実。転換の過渡期には利便性確保のためにもメーカーや政府が連携してEVとエンジン車が共存する環境の形成が必要だ。
(日刊工業新聞社編集局第一産業部・土井俊)
―EVシフトをどう捉えていますか。
「各国で二酸化炭素(CO2)排出削減の動きが広がっており、この流れに逆らうことは難しい。自動車の電動化は進むだろうが、米テスラのようなEV専業メーカーが注目されるうちは、EVは一般的な車とはまだ言えない」
―EV普及への課題は。
「航続距離の短さと、それに伴う充電の煩わしさだ。各社は高性能電池を開発し、ガソリン車と同じような航続距離とすることに力を入れているが、EVはガソリン車とエネルギー形態が異なる。EVが増えれば、充電器の設置数や電力も膨大となる。いずれは電気の特徴を生かした燃料供給の仕組み作りが必要だろう」
―具体的には。
「走行しているEVに無線で電気を送るワイヤレス給電が有力だ。停車時の短時間充電も組み合わせれば、車に大容量電池を積まずに快適な運転環境を実現できる。走行中ワイヤレス給電の設備を道路下などに埋設すれば、大容量電池を搭載したEVを普及させるよりも社会コストは小さく、リチウム(の枯渇)など資源リスクも避けられるはずだ」
―EVに置き換わることで自動車の魅力に変化はありますか。
「EVの最大の特徴は、モーターの優れた制御性を生かした走行性能の高さだ。EVになっても車を運転する楽しみは変わらない。自動運転やネットワーク接続性と親和性が高い点も魅力だ」
―今後のEVを取り巻く環境をどう見ますか。
「世界的にEVが普及する中で、市場に応じたユニークな商品開発が進むほか、近距離移動用のパーソナルモビリティーとしての活用がさらに広がる可能性もある。また家電メーカーの英ダイソンのような異業種からの参入やベンチャーの誕生も増えるだろう」
【記者の目】
EVが“普通の車”と認知されるにはまだ課題が多く、エンジン車から一気に置き換わることはないだろう。一方で、EVが次世代エコカーの有力な選択肢であることも事実。転換の過渡期には利便性確保のためにもメーカーや政府が連携してEVとエンジン車が共存する環境の形成が必要だ。
(日刊工業新聞社編集局第一産業部・土井俊)
日刊工業新聞2017年10月17日