フィンテックは中小企業の味方!お金の流れで経営が変わる

バックオフィスを支援から資金調達まで

 企業数で見ると、わが国では99.7%を中小企業が占める。ここが成長を遂げなければ、産業の競争力が復活することはあり得ないだろう。そのトリガーとなるべく注目されているのが、実はフィンテックだ。フィンテックの普及は、中小企業が主役となる時代を呼び寄せる。それでは中小企業が自らの力を存分に発揮し、グローバルに活躍の場を広げていくために、フィンテックができることは何なのだろうか。

 仮想通貨の派手な動向などが何かとかまびすしいフィンテックではあるが、中小企業から見たフィンテックの最大のメリットは、経理などバックオフィス業務を支えてくれることだ。

 クラウド型の会計ソフトの市場が伸びているのもそのため。インターネットバンキングなどと連携し、経理業務を自動化する。

 通帳を見ながら1件、1件明細を打ち込んだり、たまった領収書を前にウンザリしたり―。そのような経理作業は、月に一度のことかも知れないが、中小企業、それも個人事業やスモールビジネスとなると結構な負担だろう。

 freeeは国内で先駆けて、2013年3月に「クラウド会計ソフト freee」を発売した。この春にはユーザー数が80万を突破している。

 口座から入出金があった場合はインターネットバンキングから会計ソフトに自動で連携。勘定科目も自動で推測するため、問題がなければユーザーはただ登録のボタンを押していくだけ。

 ちょうど電子メールを未読から既読にしていくような作業であるが、同様の取引であれば2回目以降は登録ボタンを押す必要もなく、自動で仕訳が完了する。

 仮に勘定科目が推測できない場合や違っていた場合は手入力となるが、機械学習によって使えば使うほど推測精度は向上していく。

 MM総研の調査によると、クラウド型会計ソフトでfreeeのシェアは32.3%でトップに立つ。会計ソフト利用者のうちクラウド型はまだ14.5%にとどまるが、freee社長の佐々木大輔さんは「創業1年未満の企業だとクラウド会計の利用率が半分を超えている」と指摘する。

 この分野には個人資産管理(PFM)、いわゆるクラウド型家計簿ソフトの最大手であるマネーフォワードや、パッケージ型でトップの弥生も参入する。この市場が活性化すればするほど、中小企業のバックオフィスは効率化される。

 フィンテックは企業の資金調達の姿も変える。会計ソフト上のリアルタイムデータを共有することを前提に、創業間もない企業でも融資を受けられるサービスが始まっている。

 リアルタイムの商流データによって融資を行う「トランザクションレンディング」が広がれば、たとえ赤字企業で担保がなくても、足下の受注状況などが良好であれば融資を受けられる。成長期の企業にとっては、資金不足でチャンスを逃すという悲劇を避けられる。

 さらに銀行を頼らない資金調達も登場している。たとえば投資家と融資先をインターネット上で結びつけるソーシャルレンディング。いわばクラウドファンディングの貸し付けタイプだ。

 この業界で国内最大手のmaneoマーケットでは、累計での融資額が850億円を超えた。「1年前は毎月150人から200人の新しい投資家が加わっていたが、最近では毎月1000人近く増えている」と同社取締役の安達善夫さんが話すように、低金利時代が続く中で新たな投資先として注目が高まっている。

起業家のハードル低く、ネットで投資家募る


 融資を受ける側の業態はさまざまだ。ビルのリノベーションを行う不動産業者や、創業から間もない企業、緊急で資金が必要な企業など、これまでだと銀行の融資からは漏れてしまった領域が主な対象となる。

 maneoマーケットではmaneoとして自社でソーシャルレンディングを展開するほか、飲食店や不動産、再生可能エネルギー、ショッピングセンターなど、それぞれの業種に特化した事業者にも自社のプラットフォームを提供。それら事業者が個々の融資先を評価、サポートすることにより、借り手の事業が成功する可能性を高める。

 矢野経済研究所によると、ソーシャルレンディング(貸し付け型クラウドファンディング)の国内市場規模は2017年度に、前年度比46.8%増の約987億円に達する見通しだ。銀行ではカバーできない“ファイナンスの隙間”は大きく、「借り手のニーズはまだまだ大きい」(安達さん)という。

 仮想通貨の世界ではICO(イニシャルコインオファリング)による資金調達が急激に伸びている。ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨と引き替えに、トークンと呼ばれる独自の“通貨”を発行する。

 ブロックチェーン技術を活用したプロジェクトなどが対象となり、トークンはそのプロジェクトで利用できるケースが多い。仮想通貨を利用するためインターネットを通じて世界中から資金を瞬時に集めることも可能だ。

 実際、仮想通貨ブームもあってか、トークンの値上がりを期待した投資家が殺到。仮想通貨の電子メディアであるコインデスクによると、半年前は累計で3億ドルを超える程度だったICOによる資金調達額が、現在(9月27日時点)は24億ドル近くまで達している。

 その多くの企業が、ホワイトペーパーという事業計画書を出しただけで、まだ事業の実体もできあがっていない段階。いわばアイデアだけで投資家に広く訴えかけ、それが認められれば資金調達できる。加えてトークンには配当義務や議決権は生じず、起業家にとってこれほど有利な方法はない。

 一方でリスクも大きく、詐欺まがいのICOも続出。中国や韓国などICOを禁止する国も出始めた。そのため今後はICOにも規制が課せられ、仮想通貨のブームも沈静化はするだろう。

 ただフィンテックによって、起業家が新たなプロジェクトを立ち上げるハードルがかつてなく低くなることは間違いない。日本でも今年9月、ブロックチェーンを利用したソーシャルメディアを目指したALISが、ICOで約4億3000万円の調達に成功した。

 同社は2018年4月にベータ版、同10月にサービス開始を計画している。「シードラウンドでこれだけの金額を集められることは普通はありえない」と同社CEOの安昌浩さん。ICOに応じたのは4381人。そのうち35%が海外からという。

 仮想通貨やブロックチェーンに詳しい弁護士の河合健さんは「日本でICOの事例は少ないが、進行中の案件は多くある。ICOが一つの資金調達手段として認められる流れが出てくるだろう」と期待を示す。

池田 勝敏

池田 勝敏
10月12日
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 メガバンクも「応用プログラムインターフェース(API)」の公開を加速している。フィンテック企業が銀行システムに接続し口座情報などを取得できるもので、三菱東京UFJ銀行は2018年度から特設サイトを通じてスマートフォンアプリ開発業者によるAPI利用の受け付けを始める。9月にアプリ開発業者向けにダミーの口座情報に接続できる体験版サイトを開設した。18年度から同サイトで本番接続の申請を受け付ける。セキュリティーなどの審査を通過した申請者は同行のAPIを通して口座情報に接続できるようになり、新たなサービス開発がしやすくなる。同行は既にfreeeとオービックビジネスコンサルタントにAPIを公開。同行の法人向けインターネットバンキングの利用者は、両社の会計ソフトで残高や入出金の明細を自動で取り込むことができる。
 三井住友銀行も10月から対話アプリ「LINE」に公開し、インターネットバンキングの個人利用者がLINE上で口座残高や入出金明細を確認できるようにする。みずほ銀行もマネーツリー、マネーフォワードなどにAPIを公開している。既に5月時点で数十社の外部企業からの利用要望を受けており、外部との連携を推進していく方針だ。
 5月に成立した改正銀行法は、金融機関とフィンテック企業とのオープンイノベーションを推進するため、銀行に対してAPI公開に対応できる体制整備を求めている。API公開によりフィンテック企業がサービス開発をしやすい環境を整え、顧客の利便性を高める動きが広がっている。

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