宇宙のゴミ掃除は“総合格闘技”、日本発の技術着々

大きなゴミは回収、小さなゴミは分布把握し人工衛星守る

 地球を回る軌道上にはロケットや人工衛星の残骸から発生した「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)が散乱している。これまではコストや技術の問題で手をつけられない状態が続いてきた。

 宇宙開発の妨げとなるこうしたゴミを除去しようと、欧米を中心に多くの国や企業が研究を進めている。国内でも海外勢に負けじと研究開発が進んでおり、“日本発”の技術による宇宙空間の利用拡大への貢献を目指している。

 現在、地球の周りを回る宇宙ゴミの数は実に億から兆とも言われる。使用済みの人工衛星は他の衛星と衝突しない“墓場”となる軌道に入れるか、大気圏に突入させ燃え尽きさせるなどの方法がとられているが、宇宙ゴミは増加する一方だ。

 宇宙ゴミは国際宇宙ステーション(ISS)がある400キロメートル付近で、秒速約8キロメートルで飛行している。小さなゴミでも衝突時のエネルギーが高く、宇宙ゴミを早く取り除かなければ宇宙開発ができなくなるとの声が挙がる。

世界に先がけ、17年度内打ち上げ


             

 こうした中、日本発の宇宙ベンチャーであるアストロスケール(シンガポール)が12日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と宇宙ゴミの除去に向けて共同研究開発契約を結んだ。同社は2020年に世界初の宇宙ゴミ除去ビジネス開始を目指している。岡田光信最高経営責任者(CEO)は「宇宙ゴミの除去技術は総合格闘技。解決策を示すにはすべての技術をトータルで行う必要がある」と強調する。

 同社では宇宙ゴミを大小に分けて対策する。一定の大きさ以上のゴミは衛星を使って除去し、10ミリメートル以下の小さいゴミは取り除くのではなくゴミの分布を把握して衛星を防御する戦略だ。

 手始めに微小な宇宙ゴミを計測し、軌道上のゴミの分布を調べるための超小型衛星「IDEA OSG1」を完成した。微小な宇宙ゴミの分布や量のモデルを作り、宇宙機の防護設計や衝突被害の最小化に役立てるのが目的だ。

 同衛星は0・1ミリ―10ミリメートルの宇宙ゴミを軌道上で計測する。約2年間運用する予定で、開発コストは数億円程度とみられる。微小な宇宙ゴミをとらえる確率は年間数個程度と考えられている。17年度内にロシアのロケット「ソユーズ」で打ち上げる計画だ。

 さらに19年前半には大型の宇宙ゴミ除去の実証衛星「ELSA-d」を打ち上げる。同衛星には仮想の宇宙ゴミを内蔵。軌道上で仮想の宇宙ゴミを分離した後、衛星が対象物を捕まえ、衛星ごと大気圏へ再突入する。

 同社はJAXAと宇宙ゴミへの接近・捕獲技術に関する試験技術や同衛星の画像データの評価などで協力する。

膜展開・レーザー照射、軌道離脱技術実証進む


              

 最近、多数の衛星を一体的に運用する「衛星コンステレーション」と呼ばれる手法が増えている。大型衛星1機に頼らず、軌道上から多くの小型衛星で同時に地球観測する。防災や農業などへの利用が期待されている。日本では宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都千代田区)が22年までに50キログラム級の衛星50機を軌道上に配置する計画だ。

 こうしたビジネスに対し、アストロスケールの岡田CEOは「宇宙ゴミの除去サービスで軌道を清掃し衛星を守ることは、宇宙開発企業のリスク軽減になる。コンステレーション運用では、衛星の数%が故障すると見積もられており、この除去が必要とされるだろう」と今後のビジネス展開に期待する。

 中島田鉄工所(福岡県広川町)と東北大学の桑原聡文(くわはらとしのり)准教授は、手のひらサイズで1・3キログラムと軽量で膜展開軌道離脱装置を装着した小型衛星「フリーダム」を開発した。衛星が軌道上で薄膜を展開すると、上空のわずかな空気の抵抗を受け衛星が減速。大気圏に再突入し、不要となった衛星が消滅する。小型衛星のデブリ化を防ぐ。

 2月には薄膜を展開し大気圏への再突入に成功した。桑原准教授は「今後50キログラム程度の衛星に適用し、宇宙ゴミ除去装置として世界標準にしたい」と意気込む。

 15年には理化学研究所と欧米の共同研究チームが、軌道上から数センチメートルサイズの宇宙ゴミに向けてレーザーを照射し地球の大気圏に突入させる方法を考案し発表。JAXAは2月に国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運び終わった補給船「こうのとり」を利用し、宇宙ゴミ除去の要素技術の実証実験を実施した。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2017年9月29日「深層断面」から抜粋

日刊工業新聞 記者

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10月01日
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 宇宙ゴミの除去には発見・接近・捕獲・大気圏再突入といった多くのプロセスが必要だ。米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)など欧米の研究機関はロボットアームや網で宇宙ゴミを捕獲する方式などを提案しているが、まだ検討段階。決定打となる方法はない。
(日刊工業新聞科学技術・冨井哲雄)

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