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出光と東レ、有機EL材料での提携に過酷な現実あり

値下げ圧力を少しでも回避、機能統合部材の開発力強化へ
出光と東レ、有機EL材料での提携に過酷な現実あり

LGの有機テレビ(LG公式ページより)

 出光興産と東レは26日、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)材料事業で提携したと発表した。両社の有機EL材料や技術、知見を持ち寄るだけでなく、評価設備や生産設備なども活用。ディスプレーへの採用が目立つスマートフォンやテレビ向けに、ディスプレーの性能や耐久性の向上、コストダウンに寄与する材料の開発・供給につなげる。

 出光は青色の発光材料をはじめ、電子輸送材や正孔輸送材といった有機ELの主要部材をすべて手がける。一方の東レも独自の分子設計技術を使った電子輸送材や耐久性を引き上げる絶縁材に強みを持ち、これらを組み合わせることでより差別化された材料を完成できると判断した。

 出光は同事業で韓国のLG化学や斗山、ドイツのメルク、中国BOEテクノロジー・グループとも提携している。有機ELディスプレーは、スマホやテレビへの採用増を追い風に韓国・中国のディスプレーメーカーが積極的な投資を継続。2020年の世界市場は、足元の約3倍に成長するとの予測もある。

日刊工業新聞2017年9月27日
鈴木岳志
鈴木岳志 Suzuki Takeshi 編集局第一産業部 編集委員
 今回の技術提携の大きな目的は、機能統合部材の開発にある。2社はそれぞれ異なる有機ELディスプレー関連材料に強みを持って研究開発や事業展開を行っている。ただ、単品売りではエレクトロニクス業界、特にテレビやスマートフォン向けでよく見られる強烈な値下げ圧力にさらされる。  タッチセンサーフィルムなどを展開する住友化学も各種フィルムを一体化した機能統合部材の開発に力を入れている。顧客の製造に関わるトータルコスト削減につながる機能統合部材で、値下げ圧力を少しでも回避する狙いがある。  各社の電子材料事業は有機ELなど一見華やかだが、実際は過酷だ。最終製品であるテレビなどの商品サイクルは短く、それに合わせて材料にも毎回性能向上が求められる。一方で、値下げ圧力のすごさは量販店などでのテレビの値下がり具合から容易に想像できるだろう。

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