DMG森精機社長「“EVの波”むしろ商機」

工作機械「内燃」と「電気」、同時対応必要に

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森社長
 工作機械業界を取り巻く環境が大きく変化している。一つはIoT(モノのインターネット)による製造改革、もう一つは電気自動車(EV)化だ。DMG森精機はオープンな産業用IoT基盤の新連合を日独企業中心に結成し、他社への参画を呼びかけ始めた。急速なEV化の流れについて森雅彦社長は、広範な産業を網羅する総合工作機械メーカーの強みを生かし、自動車向けの減少を「十分に補える」と考える。

 ―急速にEVにシフトしそうです。工作機械業界への影響をどうみますか。
 「心配していない。EVになると自動車部品産業がむしろ拡大するとの見方もある。確かにカムシャフトをはじめ3C、5Cと呼ばれる基幹部品は極めて減るだろうが、自動車に使われる半導体、金型などは増える。当社の自動車向けの比率は現在の25%が10―15%になりそうだ。一方、半導体は6、7%が15%になり、通信、発電関連も増える。寿命が延び、健康寿命も延ばそうとなれば、今の医療向けは8%が15%になる。車が減る分は十分に補える」

 ―工作機械の全体需要をどう考えますか。
 「2030年ごろには、先進国並みの生活を送る人が20億人と5億人ほど増加し、車やスマートフォンといった製品の需要が高まる。今の5兆―6兆円の市場規模は変わらない。ただ、技術は変遷し、5軸加工機や複合加工機が増え、自動化設備、検査装置が工作機械に付くようになる。すると工作機械の付加価値は上がる」

 ―独カールツァイスなど日、独、香港の5社と産業IoT基盤を提供する合弁会社「ADAMOS(アダモス)」を設立しました。
 「1000分1ミリ秒単位でコントロールされている工作機械、100分1ミリ秒の工場、クラウドは1秒の世界だ。メーカーに関わらず工作機械を含む工場設備とクラウド間をくっつける仕組みだ。自社工場を見える化するイメージで、統合業務パッケージ(ERP)に自在につながる。取れる情報は出来高、主軸の状態など、当社の『メッセンジャー』というサービスで見られるものはすべてだ」

 ―IoT基盤が多く発表されています。
 「数値制御(NC)装置メーカーのIoT基盤と良好な関係を保ちながら、くっつけようとするものだ。欧州の治具メーカーや、あまり競合しない工作機械メーカーも参画する意向がある。来年の米国や日本の工作機械見本市のころには、全世界で10カ所くらいつなげた事例がでてくる」

<記者の目>
EV時代が瞬く間に到達しそうだ。英仏が40年までにガソリン車の禁止、中国も同様の施策を掲げる。独フォルクスワーゲンは30年に全車種に電動車両を設定する。ただ、足元は内燃機関関連を含めた車向けの設備投資が旺盛。同分野の工作機械開発は手を抜けない。工作機械各社は、EV時代への移行準備とこれを同時並行させる、難しいかじ取りが求められる。
(日刊工業新聞第一産業部・六笠友和)

日刊工業新聞2017年9月25日

COMMENT

中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

森社長が大胆にEV化時代の森精機の業容転換の未来を予測しており、非常に興味深いインタビュー。ただ、どの時間軸か、どういったEV化シナリオに基づくかは不明だ。電動化社会に中ですそ野の広い自動車産業構造への影響は今後慎重に分析していかなければならない。伝統的ビジネスは欧米勢が切り離しを加速しており、今後10年は伝統的な工作機械は繁忙となるだろう。その間にいかに適切に電化時代の業容転換を進めていくのか。大切なことは新旧の構造転換のバランスをどう見極めることだろう。

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