排水油脂を発電燃料に。回収先は松屋など

TBMが“三方よし”のビジネスモデル

 埼玉県入間市の市民広場で10日に開かれたイベントに、「バイオマス発電車」が登場した。トラックに積まれた発電機が約10店の出店に電力を送った。燃料は飲食店から集めた油脂だ。

 飲食店の排水には調理で使った油脂が含まれる。水質悪化を防ぐため店舗には排水を一時的にためる水槽があり、浮かび上がった油脂を回収して廃棄処分している。

 家庭や飲食店で残った天ぷら油はバイオディーゼル燃料に精製し、バスやトラックの走行に使える。排水油脂は水分が多く食品かすも混ざっているため、未利用資源となっている。

 この油脂を発電の燃料にする技術をティービーエム(TBM、埼玉県所沢市)が開発した。同社の本業は飲食業の排水処理。当初、排水油脂をバイオディーゼル燃料にしようと検討した。

 しかし、精製工程で汚水や廃棄物となる副産物が発生することが分かった。TBMの佐原邦宏社長は「水処理業なので水を汚すことは本業に反する。環境ベンチャーでもあり、廃棄物を出す訳にはいかない」と見送った。

 2011年の東日本大震災後の電力不足をきっかけに、発電の燃料を目指すことにした。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発に着手。油脂から水分と食品かすを取り除き、発電機で着火しやすいように改質する技術を確立。熱量は化石燃料から作る軽油よりも5%少ない程度。

 もともと動物性油脂なので、燃やしても二酸化炭素(CO2)排出量が少ない。精製時に副産物も出ない。「排水油脂の燃料化は世界初。重要な技術なので内容は非公開」(佐原社長)と語る。

 埼玉県嵐山町に同社の燃料製造兼発電所がある。店舗から回収した油脂から燃料を作り、発電機に投入して発電している。バイオマス発電車は油脂由来電気を直接、届けようと開発した。油脂の回収地域のイベントに出動し、来場者にエネルギーの地産地消を実感してもらう。災害時の電源として期待する自治体も多い。

 TBMの技術は油脂回収による水質保全、排水油脂の廃棄削減、発電時のCO2排出抑制の環境効果がある。同社が油脂を買い取るので店舗は処分費を減らせる。佐原社長は「まさに三方よし」と胸を張る。

 サーキュラー・エコノミー(循環型経済)は経済原理で資源循環を回す新しい成長モデル。日本企業のリサイクル技術がサーキュラー・エコノミーの到来を先導する。

日刊工業新聞2017年9月19日

松木 喬

松木 喬
09月24日
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捨てるしかなかった廃棄物から富を生み出すのがサーキュラーエコノミー。知恵を使った分、独自性があって他社にマネができない技術・ビジネスができます。捨てていた排水油脂を燃料にし、発電を始めたTBMは社員10人の会社。マツヤなど有名なファーストフード店が回収先。飲食店にも、環境にも、自社にも良い三方よしのビジネスモデルです。

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