英仏のガソリン車禁止 「政府方針にしては内容が乏しいが…」

脱炭素、石炭火力でも。政権交代で方針が変わることはない

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フランクフルト国際自動車ショー公式ページより
 英国、フランスが相次いで2040年までにガソリン車とディーゼル車を販売禁止にする方針を表明した。両国は石炭火力発電所の廃止も打ち出している。温室効果ガスの排出ゼロを目指す「パリ協定」が発効されたとはいえ、大胆で、実現を疑うような決断がなぜできたのか。背景や今後の影響などを識者に聞いた。

 英、仏のガソリン車などの禁止表明について、国際環境経済研究所の水戸部啓一理事は「検討過程が明確ではない。政府方針にしては内容が乏しい」と分析する。そしてパリ協定離脱を決めた米政権へのけん制など、政治的理由からの発表という見方を示した。

 欧州は先に大胆な目標を掲げ、後から具体策を検討するのが常道だ。今回の表明も“アドバルーン”的な要素はあるが、唐突という訳でもない。

 国際エネルギー機関は12年、20年ごろにガソリン車などが頭打ちとなり、50年には電気自動車(EV)など次世代車が90%を占めるとする世界の自動車普及予測をまとめた。この報告書が英仏の発表のよりどころになっている。

 また水戸部理事は「規制は実現まで時間がかかる」と指摘。90年代に決まった米カリフォルニア州のゼロエミッションビークル規制(排ガスゼロ規制)も、運用開始まで10年以上かかった。ただ、方向性は見えており「部品メーカーはEV化への備えをしておくべきだ」と助言する。

 一方で15年末、英は25年までに、仏は23年までに石炭火力を全廃すると表明した。自然エネルギー財団の大久保ゆり上級研究員は発表できた理由に、再生可能エネルギーのコスト低下を挙げる。

 欧州では風力発電や太陽光発電が普及し、再生エネの発電コストが急速に下がっている。カーボンプライシング(炭素の価格付け)が広がると、石炭火力はコストが上昇する。いずれ再生エネがもっとも安く電気を供給できると見通し、英仏は経済面からも石炭廃止が可能と判断した。

 仏は火力依存が高くないという事情もある。一方で英国は火力依存度が高い。それでも廃止を表明したのは「企業と折り合いをつけてやっているから」(大久保研究員)。環境対策の税金を上げる代わりに社会保障税を下げるなど、英政府は企業負担に配慮しながら温暖化対策を進めている。

 政治の決断に呼応するように欧州の電気事業連合会は20年以降、石炭火力を新設しないと宣言した。

 すでに再生エネに押され、高コストとなった火力発電部門を手放す電力会社が出てきた。英仏の発表が市場を突き動かしており、パリ協定が目指す脱炭素への流れが加速されそうだ。
               

(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年9月21日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

欧州の電事連が、自ら石炭火力を造らないと宣言していました。知らなかったので恥ずかしかった(一部、宣言から除外の国も)。車でも民間側(車メーカー)が自らEVシフトしています。欧州は、政権交代で気候変動対策が転換になることが少なく、企業も途中ではしごを外されることがなさそうです。

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