CO2が足りない!?ビールの危機

工業用途で受給が逼迫

 ビールの危機だそうだ。今夏が長雨だったとか、酒税法改正により安売り規制が強化された影響で販売が厳しいという話ではない。原料の二酸化炭素(CO2)の需給が全国的に逼迫(ひっぱく)しているのだという。

 CO2は飲料や食品のほか、工業用途でも幅広く使われている。現在は石油精製工程からの副生が多い。繊維・樹脂原料になるアンモニアの副生物であり、化学メーカーの生産撤退が相次いだことに伴い、供給量が不足している。

 この事実を知った“ビール党”は気が気ではないだろう。しかも石油元売り各社の構造改革の行方次第では、さらに深刻な事態となりそうだ。今後、合従連衡後の製油所統廃合が控えているからだ。

 中国、四国地方は特に厳しいという。CO2は溶接で多く利用され、瀬戸内海に集中する造船業界と奪い合いになりがち。お隣の九州地方も年間需要の8万トンに対して供給能力は5万トンしかない。ほかの地域からの長距離輸送が常態化しているという。

 10月には水島コンビナート(岡山県倉敷市)で大陽日酸が液化CO2の専用製造設備を稼働する。来夏には大分コンビナート(大分市)で昭和電工も続く。来夏の乾杯のためにも、需給が少しでも緩むことを祈りたい。

日刊工業新聞2017年9月14日

明 豊

明 豊
09月17日
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 経産省は石油精製や石油化学、普通鋼電炉、板ガラスといった素材産業に事業統合や設備集約などを促す「産業競争力強化法第50条」を適用している。これらの業界では供給過剰構造で企業収益が低迷し、海外大手との格差は開くばかり。そんな状況に経産省は危機感を募らせるが、霞が関主導の業界再編に抵抗感を持つ企業は少なくない。さらに設備の統廃合が進むと、一部の化学品で供給が不足する懸念もある。
 炭酸飲料や溶接ガス、ドライアイスの原料となる二酸化炭素は石油精製やアンモニアプラントが供給源。これらのプラントが減った結果、ドライアイスの供給などが逼迫(ひっぱく)するようになった。また低燃費タイヤの材料、ブタジエンはエチレンプラントの併産品。国内で原料確保が難しくなり、メーカーは設備の投資先を海外に移した。電炉も全国各地で排出される鉄の再資源化という役割を持つ。諸工業の活力の源である素材産業。他産業への影響を抑えつつ、国際競争力を高める複雑な方程式を解かないといけない。

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