アトピー性皮膚炎、症状改善には“汗のかき方”が重要
汗を皮膚表面に送りためること
猛烈なかゆみを伴う湿疹が皮膚に現れるアトピー性皮膚炎。症状の程度は患者によって異なるが、一般的に患者は健常者と比較して皮膚表面の水分量が少なく、バリアー機能が低くなっている。バリアー機能が低下するとかゆみの原因であるアレルゲンが侵入しやすくなり、炎症の悪化を招く仕組みだ。杏林大学皮膚科の塩原哲夫名誉教授は、バリアー機能の正常な維持のためにも、積極的に「汗をかくこと」の重要性を説く。
アトピー性皮膚炎にとって汗は症状を悪化させるとされ、患者の多くは汗をかくとかゆみを訴える。汗はかゆみの原因となるたんぱく質などを含んでおり、汗がかゆみを引き起こし、炎症の悪化を生じさせる。
実際、診療現場では、患者は発汗を抑えるよう指導される。また炎症を抑えるのに効果的なステロイド外用薬も発汗を抑制している。
皮膚にはアレルゲンの侵入を防ぐバリアー機能があり、その機能は表面の乾燥によって低下しやすい。これまで乾燥は、皮膚表面からの水分の蒸発量が多いために起こると考えられていたが、塩原教授は、発汗量の低下による乾燥の方が皮膚表面の水分量への影響が大きいことを明らかにした。
かゆみを引き起こす汗だが、「皮膚表面では悪さをしない」と強調する。では何が問題か。それはアトピー性皮膚炎の患者の“汗のかき方”だという。
汗を皮膚の表面に送るホース状の組織「汗管」と周辺の組織を調べると、患者は汗に含まれるたんぱく質が汗管から漏れていることが分かった。漏れ出た汗で免疫に関わる肥満細胞が刺激され、かゆみの原因になる。「汗を皮膚表面に送り、ためることが重要。それには汗をしっかりかくこと」と説明する。
バリアー機能に異常があるモデルマウスを使った実験では、湿度の高い環境下ではマウスはかぶれにくいことを実証している。
しかし現代は「空調管理されて乾燥した室内で生活し、入浴はシャワーで済ませるなど、発汗が促されない生活をしがちだ」。塩原教授は、増加するアトピー性皮膚炎の患者と生活習慣の関連をこう指摘する。
さらに治療については「ステロイド外用薬を適切に使い、保湿剤で発汗機能を正常に戻すことが治療につながる」と説明する。
治療に時間がかかることも多いが、「診療には触診が重要。肌の水分量の変化を観察し、時間をかける治療の選択肢があっていいのでは」と提唱する。
(文=安川結野)
アトピー性皮膚炎にとって汗は症状を悪化させるとされ、患者の多くは汗をかくとかゆみを訴える。汗はかゆみの原因となるたんぱく質などを含んでおり、汗がかゆみを引き起こし、炎症の悪化を生じさせる。
実際、診療現場では、患者は発汗を抑えるよう指導される。また炎症を抑えるのに効果的なステロイド外用薬も発汗を抑制している。
皮膚にはアレルゲンの侵入を防ぐバリアー機能があり、その機能は表面の乾燥によって低下しやすい。これまで乾燥は、皮膚表面からの水分の蒸発量が多いために起こると考えられていたが、塩原教授は、発汗量の低下による乾燥の方が皮膚表面の水分量への影響が大きいことを明らかにした。
かゆみを引き起こす汗だが、「皮膚表面では悪さをしない」と強調する。では何が問題か。それはアトピー性皮膚炎の患者の“汗のかき方”だという。
汗を皮膚の表面に送るホース状の組織「汗管」と周辺の組織を調べると、患者は汗に含まれるたんぱく質が汗管から漏れていることが分かった。漏れ出た汗で免疫に関わる肥満細胞が刺激され、かゆみの原因になる。「汗を皮膚表面に送り、ためることが重要。それには汗をしっかりかくこと」と説明する。
バリアー機能に異常があるモデルマウスを使った実験では、湿度の高い環境下ではマウスはかぶれにくいことを実証している。
しかし現代は「空調管理されて乾燥した室内で生活し、入浴はシャワーで済ませるなど、発汗が促されない生活をしがちだ」。塩原教授は、増加するアトピー性皮膚炎の患者と生活習慣の関連をこう指摘する。
さらに治療については「ステロイド外用薬を適切に使い、保湿剤で発汗機能を正常に戻すことが治療につながる」と説明する。
治療に時間がかかることも多いが、「診療には触診が重要。肌の水分量の変化を観察し、時間をかける治療の選択肢があっていいのでは」と提唱する。
(文=安川結野)
日刊工業新聞2017年9月8日