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測定時間30秒、口臭をチェックするガスセンサーの“高感度”

新コスモス電機が産総研との連携で実現
 新コスモス電機はガスセンサーを独自開発し、家庭用ガス警報器、ガス検知器、工業用ガス警報システムなどに応用展開するメーカー。超高感度ガスセンサーによりにおいが評価できることを見いだし、世界に先駆けてニオイセンサーを実用化した。2002年には歯科医院向けの口臭測定器ブレストロンを開発し、ヨシダから販売している。

 呼気には多くのガス種が含まれるが、その中でも揮発性硫化物が口臭と関係がある。口臭測定では、呼気中の0・01―1ppmの極微量の硫化水素などを選択的に検知しなくてはならないが、これまでのセンサーは感応膜に酸化亜鉛を使用していたため応答性が悪く改善が望まれていた。

 一方、産業技術総合研究所では、セリア(酸化セリウム)ナノ粒子を用いると応答速度が極めて速い酸素センサーが実現できることが見いだされ、当社の技術者との交流を重ねる中で、この材料が硫化水素の高感度迅速計測にも応用できることが確認された。

 そこで産総研の技術移転支援制度である「特許実用化共同研究」を活用することで、セリアナノ粒子を用いた高感度硫化物センサーにより測定時間を30秒に短縮した口臭測定機ブレストロンIIを12年より販売することができた。

 新規材料をガスセンサーに用いる場合、品質保証の根拠となる検知メカニズムの解明が必須となるが、これには高度な材料評価技術と専門知識が要求される。民間企業単独では2―3年は要するこの検証作業も産総研との連携によって期間が大幅に短縮され、新商品の発売につながった。

 セリアナノ粒子を利用したガスセンサーの応用は口臭測定器に留まらない。セリアは酸化物イオン−電子混合伝導体でもあり、この特長を生かせば既存のガスセンサーでは不可能であった真空中や無酸素中での極微量水素の検知も可能になる。

 大気圧―高真空の広い圧力範囲で水素を検知できる技術は、水素漏れ検査装置のほか将来の再使用ロケットの分野でも必要になる。このセンサーの開発でも産総研の「技術コンサルティング」制度を活用することで、短期間で検知メカニズムを解明できた。

 現在、宇宙航空研究開発機構との共同研究によりこのセンサーの実用化に取り組んでいる。今後水素エネルギーの利用拡大が見込まれる中、当社は開発商品の普及を通じて水素の安全利用に貢献する所存である。
(文=新コスモス電機技術開発本部担当部長・鈴木健吾)
日刊工業新聞2017年9月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
産総研の無機機能材料研究部門テーラードリキッド集積グループ長である伊豆典哉氏からのコメントです。 「新コスモス電機は、産総研の持つ高速応答ガスセンサー技術を自社のセンサー装置開発技術と見事に融合し、新しい測定器を商品化した。今後もさらなる連携により、優れた技術が次々と世の中に出ることを期待している」

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