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航空機向け給油車でシェア7割、改良は「チキンラーメン」のように

矢野特殊自動車、走る00の差異化プロジェクト
航空機向け給油車でシェア7割、改良は「チキンラーメン」のように

航空機に燃料を補給する給油車

 空の世界で“働くクルマ”が活躍中―。矢野特殊自動車(福岡県新宮町、矢野彰一社長、092・963・2000)は、タンクローリーや車両運搬車などの特殊車両を製造する。1958年に完成させた日本初という冷凍車は全国シェア3割を誇る主力製品に成長した。航空業界向けでは燃料を供給する給油車とフードローダーと呼ぶ機内食を搬入する車が活躍している。

 矢野社長は「高品質は譲れない」と製品の特徴を話す。給油車は民間向けで7割のシェア。今では主流になりつつあるプログラマブルコントローラーを先駆けて採用。電気や電子回路の配線関係、安全装置のオンオフの状況などが運転席から一目で確認できるように改良した。常にユーザーの立場で作業効率を高める設計を考える。

 温度管理が必要なフードローダーには冷凍車で培った技術が生きる。外壁に繊維強化プラスチック(FRP)、内板にアルミを採用。耐久性や断熱性を向上させ、メンテナンス性を高めた。天井の断熱材を削って取り付けていた照明は、天井の隅に直線で配置。影が少なく全体が明るくなり検品作業など作業者の労働環境改善に貢献した。

 矢野社長は「使い勝手を常に追求していこう」と製品改良に力を入れる。その一環で3年前に始まったのが「100の差異化プロジェクト」だ。同社の冷凍車と同じ年に生まれた「チキンラーメン」が卵を載せるためのくぼみを付けて評価されたように、小さな工夫を重ねユーザーにとって使いやすく喜ばれる製品づくりを追求する。

 トラック運転手の不足など物流は変革期にある。その中で同社は22年に創業100年を迎える。今後もプロジェクトを通じて時代に合った新製品を打ち出す構え。

 例えば、空港の整備などを担うグランドハンドリングは女性が多い。そこで操作を簡単にすることなどに取り組む。ニーズに応え運転手が乗りたくなる車で航空産業を支え続ける。
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2017年8月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
矢野特殊自動車は矢野社長の祖父である故・矢野倖一氏が現存で最古の国産乗用車「アロー号」を製造したことに始まる。大正から昭和に移り、戦争にかじが切られる時代背景から乗用車ではなく特装車製造の礎を築いた。今後は製品だけでなく輸送品質など技術パートナーとしての価値を高めて時代に対応していく。 (日刊工業新聞西部支社・増重直樹)

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