耳を引っ張って電子機器を操作できるイヤホン、その利点は?

注意力低下リスク低減、慶大が開発

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開発したイヤホンの装着イメージ(慶大提供)
 慶応義塾大学理工学部の杉浦裕太助教と杉本麻樹准教授らは、耳を引っ張ることで電子機器を操作できるイヤホンを開発した。耳を前後上下に引っ張ると耳殻の変形をセンサーが検知し、8割以上の精度で引っ張り方向を識別する。画面を見て操作する必要がなく、「歩きスマホ」のように注意力を低下させるリスクが少ない。音楽や音声案内などの操作に提案する。

 イヤホンの背面に光反射型の距離センサーを四つ搭載し、イヤホンと耳の内側との距離を測る。耳を引っ張ると耳が変形して距離が変わるため、引っ張った方向を検出できる仕組みだ。

 耳の形や引っ張る強さは一人ひとり変わるため、人工知能(AI)技術で個人差に対応した。まず使用前に耳を前後上下に引っ張り、センサーの変化量と引っ張り方向との対応を学習させる。前後上下4方向の識別精度は、装着者が座った状態で90%、歩行中は81%だった。

 イヤホンを再装着しても識別精度は88%だったため、着け外しの度に学習し直す必要はない。

 耳を横一文字に動かしたり、「Vの字」「くの字」などに動かした際の識別率は77%。音楽の再生などの操作なら十分な精度だ。

 イヤホンはコードレス化が進んでおり、入力するボタンをどこに配置するか設計がむずかしい。タッチセンサーならタッピング程度しか入力パターンがないが、耳を大きく動かせると入力できるパターンを広げられる。

日刊工業新聞2017年8月8日

COMMENT

小寺貴之
編集局科学技術部
記者

たまに耳を動かせる人がいますが、そのくらいの変位量で操作できたらすごいことです。便利だと流行ったら、人類が耳の動かし方を再獲得するためのキーデバイスになるかもしれません。生物進化というか、退化に抗う技術的な起源になったらおもしろいです。

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