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企業が社名変更する理由

旭硝子が「AGC」に。冗長な英文表記を改める!?
旭硝子は2018年7月1日から社名を「AGC」に変更する。現商号の英文表記は「アサヒ・グラス・カンパニー(Asahi Glass Company)」。

SUBARUへの決意表明


 SUBARU(スバル)は社名変更記念式典を東京・恵比寿の本社で開いた。吉永泰之社長が従業員約600人を前に新社名のプレートを披露した。吉永社長は従業員に向けたあいさつで「社名変更は価値を提供するブランドとして生きていくという『決意表明』だと理解してほしい」と述べた。

 スバルは2016年5月、4月1日付で社名変更すると発表していた。創業100周年の節目の年に社名とブランド名を統一し、ブランド力を高める取り組みを加速する。社名変更に合わせ社歌の一部歌詞と社章を変更した。青を基調にした新社章は「グループ章」と位置づけ、スバル本体だけでなくグループ会社も共通で使うようにした。吉永社長は「グループ会社も含めて全員でスバルを魅力的なものにしていきたいという思いがあった」と狙いを話した。

日刊工業新聞2017年4月3日



パナソニックになぜ変更? 


 松下電器産業は10日、社名を10月1日付で「パナソニック」に変更するとともに、09年度中をめどに「ナショナル」ブランドを廃止し、ブランド名を世界共通の「パナソニック」に統一すると発表した。社名とブランドを統一することでブランド力の強化を図り、海外展開を加速するのが狙い。創業者の故松下幸之助氏の名が社名から消え、構造改革がさらに進展する。

 松下は国内の白物家電商品を「ナショナル」、海外および国内の映像・音響機器を「パナソニック」とブランドを使い分けている。歴史のあるブランドの「ナショナル」は1925年(大14)に商標登録し、27年には角型ランプにブランドをつけて発売した。以降、国内向け家電製品にナショナルが使われるようになった。

 一方の「パナソニック」は北米進出に乗り出した1950年代に誕生。北米で「ナショナル」ブランドが使えず、新ブランドを考案した。由来は「Pan(すべての)」と「Sonic(音)」の合成語。1961年には米国向けの全商品に展開。「ナショナル」を展開していた欧州やアジアでも「パナソニック」にブランド変更した。
 
 業界一の店舗数を有する松下の系列販売店もパナソニックブランドに統一することになる。系列販売店には松下やナショナルへの愛着が強いが、大坪文雄社長は「粘り強く説得していく」としている。

 松下電器はこれまでもグローバル戦略として、海外でブランド名をパナソニックに統一する取り組みを徐々に行ってきており、今回の社名変更とブランド名の統一も、グローバルマーケティング力とブランド価値を一層向上させるのが目的といえる。

 名称の変更という意味では、今回の取り組みが最終章となるが、今後は名実ともにマーケティング力とブランド価値を高めていくことが重要となる。社名と製品のブランド名が一致していない場合、費用対効果が低くなることがあり、ブランド価値も分散してしまう。社名と製品名を世界的に共通化した方が分かりやすく、グローバルでのマーケティング力を高めることにもつながる。

IHIは偏ったイメージからの脱却


 社名変更は従来、事業の多角化などを背景に、企業イメージの向上を狙うケースが多かった。ここ数年では経営統合や純粋持ち株会社制への移行など統治形態の変更を理由にするものも目立つ。

 製造業大手では昨年7月1日付で社名変更したIHI(旧石川島播磨重工業)の事例がある。社名変更を決断した元社長の伊藤源嗣氏(現相談役)は「伝統的な重厚長大の偏ったイメージから脱し、ハイテク企業らしい先進的なイメージを打ち出したかった」ことを理由に挙げる。

 IHIは変更前も略称として使われていた。変更前は同社グループで「石川島」や「アイ・エイチ・アイ」がつく約70社を「1年をめどにIHIがつく社名に変える」(伊藤氏)方針だったが、現状では10社前後の変更にとどまっている。

 社名変更の効果については「もともと社内ではまったく違和感はなく、使われていた。ただ社外への浸透はまだ時間がかかりそうだ」(IHI広報)としている。

日刊工業新聞2008年1月11日


 

今年以降の主な社名変更


東芝メディカルシステムズ⇨「キヤノンメディカルシステムズ」(2018年初頭)

●アンジェスMG⇨「アンジェス」(7月1日)

●関西エックス線⇨「WITHSOL」(4月1日)

●アサヒコーポレーション⇨「アサヒシューズ」(4月1日)

●東京鉄骨橋梁⇨「日本ファブテック」(4月1日)

●マクシス・シントー⇨「マクシスエンジニアリング」(4月1日)

●住谷製作所⇨「エスカディア」(5月5日)

●富士機械製造⇨「FUJI」(2018年4月)

●大阪工機⇨「コミニックス」(2018年4月)

●音戸工作所⇨「オンド」(6月1日)

●九州通信ネットワーク⇨「QTnet」(7月1日)

●岡村製作所⇨「オカムラ」(2018年4月1日)

●宮坂醸造⇨「神州一味噌」(7月1日)

●NLTテクノロジー⇨「Tianma Japan」(7月1日)

●テムザック技術研究所⇨「MICOTOテクノロジー」(7月1日)

●ニチユ三菱フォークリフト⇨「三菱ロジスネクスト」(10月1日)



鈴木岳志
鈴木岳志 Suzuki Takeshi 編集局第一産業部 編集委員
表向きの変更理由は化学が稼ぎ頭の事業ポートフォリオと社名イメージの乖離だが、その実は現社名の英文表記が長すぎることも大いに関係ありそう。日本語なら「旭硝子」と3文字で済むが、英文だと「Asahi Glass Company」とやたらと長くなってしまう。日本企業がグローバル展開を進める中で、冗長な英文表記がビジネス現場で不評なことは意外に多い。加えて、外国人にとって発音しにくい社名もある。内向き志向からの脱却という意味合いでも面白い試みだ。先を越されたと悔しがっている日本企業も少なくないと思う。

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