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イヌの脊髄疾患、17年度にも再生医療で臨床研究

富士フイルム系が実施、各領域の専門医と共同で症例を集める
イヌの脊髄疾患、17年度にも再生医療で臨床研究

併設施設にはクリーンベンチが設置され、細胞培養を行う(富士フイルム提供)

 富士フイルムとアニコムホールディングスが設立したセルトラスト・アニマル・セラピューティクス(東京都新宿区、牧野快彦社長)は2017年度中にも、イヌの脊髄疾患の再生医療で臨床研究を始める。運営する動物再生医療センター病院(横浜市中区)を通じて実施する。すでに研究を開始している骨折や関節炎などイヌの疾患研究と合わせ、各領域の専門医と共同で症例を集めるなどして研究を本格化する。

 実施する予定の再生医療は、皮下脂肪由来の間葉系幹細胞(MSC)を用いた「細胞治療」。健康な個体から取り出して培養したMSCを動物に投与し、治療をする。自己免疫力の回復や、炎症を抑える効果が期待される。

 同院では乾性角結膜炎や、関節炎、慢性腸炎、骨折で臨床研究を開始している。研究は同院の倫理委員会で審議され、必ずオーナーの同意を得ることや、動物に苦痛を与えないことを定める。

 同院の細胞治療に使う細胞は、品質を保証するため、培養方法やチェック項目などを整備し、3月にルールを確立。培養室にはエアシャワーを浴びて入室するなど、管理体制を徹底した。また細胞培養施設を併設しており、保有できる細胞で約100匹に対応可能だ。

 今後は細胞治療の手順を確立し、同院から町の動物病院へ医療用細胞を提供するなど、より多くのペットオーナーが細胞治療を選択できるシステムの構築を狙う。
日刊工業新聞2017年8月10日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
現在、動物への再生医療には法規制がない。ハードルの低さによって一般の動物病院での成果が報告されている一方、施設の設備や手順などは医療機関ごとにばらつきがあり、治療効果の検証が不十分だった。

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