ニュースイッチ

「四季島」VS「瑞風」豪華列車、個性競い合う

火付け役、「ななつ星in九州」の人気も健在
 JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」が1日、運行を始めた。高級感ある内外装、開放的な展望室が特徴で、調度品や食事には、沿線の工芸品や特産品をふんだんに使う。一番列車は午前11時40分に上野駅の専用ホームを離れ、東北・北海道を巡る3泊4日の旅に出発した。

ホームではJR東日本の冨田哲郎社長や、車体をデザインした奥山清行氏ら関係者が見送った。冨田社長は「日本の素晴らしい観光資源を世界に発信したい」と語り、四季島の運行が東北の復興や地域振興への貢献につながると期待する。
出発の合図を出す野木肇雄上野駅長(左)と出発の鐘を鳴らすJR東日本冨田哲郎社長

出発する四季島の展望室から手を振る乗客

                  




「瑞風」は海が旅人を癒やす


 JR東日本が「トランスイート四季島」に続き、6月にはJR西日本が「瑞風」の運行を始める。両社ともに、企画から運行開始まで3年以上をかけ、外観、内装ともに贅(ぜい)を尽くした列車となっており、料金は1人100万円以上するコースもある。JR東日本の冨田社長は「乗ることが目的の列車を作ることで、新たな需要を掘り起こしたい」と話す。

 こうした観光列車の火付け役は、JR九州だ。JR九州は「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と称して、人口減少で厳しい経営環境にある路線に趣向を凝らした列車を次々と走らせ、鉄道事業を活性化。路線網の維持につなげている。
「ななつ星in九州」

 その集大成が13年に運行を始めた「ななつ星in九州」だ。ななつ星は1泊2日で25万円を超える価格帯や、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏による車両のデザインなど、話題を集め、予約倍率は最高で37倍と、人気を博している。

 観光列車は収益に直結するものではないが、JR九州のブランド力を上げ、上場の原動力にもなった。JR九州の青柳俊彦社長は「JR東日本やJR西日本も豪華列車を走らせるが、お客さまの獲得には自信がある」と先駆者としての意地をみせる。

 「キイテ」という車両形式名に、鉄道ファンならグッとくるはずだ。JR西日本が6月から運行を始める周遊型観光列車「トワイライトエクスプレス瑞風」。新造した87系ディーゼルハイブリッド車の両端を飾る「キイテ87」のキは気動車、イは一等車、テは展望車を表す。
「トワイライトエクスプレス瑞風」公式ページより

 新幹線が開通する前、東海道本線を走った特急列車の最後尾を飾ったのが「マイテ」や「スイテ」といった一等展望車だった。現在のグリーン車はかつての二等車。長く封印された伝統の最上級車両復活に、意気込みを感じる。

 もっとも「瑞風」に人気が出るかどうかは、車両の豪華さだけでは予想できない。食事やサービスはどうか。車窓の風景や立ち寄り観光地に魅力があるかどうか。そしてなにより、旅先での人々とのふれあいによって旅客の印象は変わる。

 「瑞風」が主に巡るのは中国地方。尾道や宮島、岩国など、瀬戸内海に面して多くの観光地が点在する。きらめく初夏の穏やかな海が、旅人を癒やす。


 
日刊工業新聞2017年3月17日/5月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 四季島は工業デザイナーの奥山清行氏がデザインを手がけ、外装の塗色はシャンパンゴールドをベースに特別調合したオリジナルの四季島ゴールドが特徴。  先頭車はガラス張りで上質感を体現したほか、内装は木材や漆、和紙など、日本古来の素材をふんだんに生かし、モダンな和のテイストが基調となっている。  四季島は発着駅となる上野駅の13・5番線ホームに入線。編成は10両で、1号車が展望車、2―4号車が客室、5号車がラウンジとなっている。最上級の四季島スイートは、メゾネット構造となっており、2階にある畳敷きの掘りごたつでくつろぎながら景色を楽しめる。  1階には寝室のほか、ヒノキ風呂を備えた浴室もあり、列車という限られたスペースの中で、非日常をゆったりと体験できる設計だ。奥山氏は「乗客が一生忘れないような旅ができるようにしたい」と話す。  JRグループは4月に国鉄分割民営化から30周年を迎えた。各社は民営化の際に与えられた車両やネットワーク、サービスを磨きながら事業規模を拡大。それぞれの個性を発揮している。

編集部のおすすめ