IT大手が注力する「ローカル5G」、新サービス開発加速のワケ
IT・情報サービス大手が、第5世代通信(5G)をエリア限定で構築する「ローカル5G」を活用した新サービス開発を加速させている。富士通は商用のローカル5Gの運用を始めた。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)や日立システムズも実験局を開設する。高速大容量、超低遅延、同時多数接続という5Gの性能を生かし、製造現場の業務革新につなげる。
【不審行動を検出】
富士通は商用のローカル5G無線基地局の免許を国内で初めて取得し、ネットワーク事業の中核拠点「富士通新川崎テクノロジースクエア」(川崎市幸区)の敷地約2万8000平方メートルで運用を開始。人工知能(AI)で人のさまざまな動作を解析し、不審行動などを早期に検出するセキュリティーシステムを実現する。顧客企業とローカル5Gを実証する場「コラボレーションラボ」でユースケース(利用例)を生み出す。
【機器の高度化】
製造業と連携した検証も本格化している。NTTコムはブリヂストンの技術センターや工場にローカル5G網を構築し、6月から共同実証実験を始める。タイヤ製造工程で使うセンサーをワイヤレス化するほか、高精細カメラによる熟練技術者の技能分析などを行う。
NECも、コニカミノルタが10月に完成予定の開発拠点「イノベーションガーデン大阪センター」(大阪府高槻市)にローカル5G検証環境を構築する。産業光学システムや医療機器、オフィス機器の高度化につなげる。
日立システムズは、ローカル5Gなど次世代無線通信技術を活用した新サービスを開発するため実験局を4月中に開設する。日立システムズネットワークス(東京都品川区)や日立システムズフィールドサービス(同江東区)などグループ各社と実証で連携。製造現場における稼働データの一括収集や産業機械の制御、カメラ映像のリアルタイム収集・配信などを目指す。
【ノウハウ作りも】
5Gはデータ通信速度が4G比最大100倍となる毎秒10ギガビット(ギガは10億)、伝送時の遅れが10分の1の1ミリ秒(1000分の1秒)、1平方キロメートルで同時接続可能な機器数が100万台。この性能を生かし、製造業のスマート工場化や建設現場のデジタル化、交通機関での映像監視などでの活用が期待されている。
ただ、実際の利用に向けては、従来と異なる5G電波の特性を踏まえた通信設計、所轄当局への免許申請手続き、地域BWAなど地域広帯域移動無線アクセスとの電波利用の調整など多くの知見が必要となる。ローカル5G網設置工事や保守運用などノウハウ作りも新サービス開発に不可欠と言える。