三洋化成と日本触媒、素材企業の力を活かし電池開発

三洋化成工業の子会社APBが来年秋から量産予定の「全樹脂電池」

10月に経営統合する三洋化成工業と日本触媒が新型電池の開発を加速する。主力の高吸水性樹脂(SAP)に次ぐ主力事業に育てる意向だ。三洋化成の子会社のAPB(東京都千代田区)は2021年秋に新型リチウムイオン二次電池「全樹脂電池」の量産を計画。日本触媒は一般の鉛蓄電池比で100倍の長寿命を実現した「カーボン―亜鉛ハイブリッド蓄電池」を開発、早期実用化を目指す。素材企業ならではの強みを生かし、電池大手など競合に勝る優位性を確立するべく、技術開発を急ぐ。(京都・大原佑美子) 「電池材料は進化するが(全樹脂電池は)“電池の形”としては究極だ」。3月上旬、APBは全樹脂電池の量産技術確立費用として第三者割当増資で約80億円を調達すると発表。都内で会見した堀江英明APB社長は自信を見せた。 正極・負極材、セパレーター、集電体といった電池の構造部材がポリマー製。集電体を樹脂にし、金属混入などの非常時に大電流が流れないなど安全性が高く長寿命だ。「余計なものをそぎ落としたシンプルな構造」(堀江社長)で、単セルをそのまま積み重ねて組電池ができる。 今後国内外で需要拡大が見込まれる再生可能エネルギーの蓄電用途など、中・大型蓄電システムへの採用を狙い、10年後には数千億円程度の売り上げを目指す。 リチウムイオン電池の研究で19年のノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローは「日本の素材産業は、完成品や用途を理解した上で、自社で素材開発・評価し、提案する力がないと生き残っていけない」と指摘する。 堀江APB社長は日産自動車出身で、車載リチウムイオン電池研究の第一人者。この知見に出資者のJFEケミカル、帝人、大林組、横河電機などの素材開発力や製品アイデア、資本力が加わり、強固なプラットフォームを構築する。効率的な量産技術の確立と安定供給先の確保を急ぎ、早期事業化に持ち込めるかが市場をリードするための条件となる。 一方、日本触媒は、自社開発の亜鉛電池用セパレーターや亜鉛負極材といった材料面からのアプローチで、これまで実用化が困難だった亜鉛蓄電池「カーボン―亜鉛ハイブリッド蓄電池」の開発に成功した。実用化に向け、生産技術の確立や販路開拓に向けパートナー選定を始めた。 @image-vaption:31642 亜鉛蓄電池の充放電を繰り返すと、亜鉛電極から針状の亜鉛結晶が成長し、正極と負極が短絡(ショート)することにより寿命が短いことが実用化への課題だった。日触はこれを鉱物粉末をシート化した独自のセパレーターで抑制。さらに充放電サイクル劣化を抑える独自の亜鉛負極材料を開発。正極には活性炭を用いるなど、資源的に豊富で毒性がなく安全性にも配慮した。現在鉛蓄電池が使用されている車載向けなどあらゆる用途への応用を見据える。 三洋化成と日触は統合後「SAP事業を安定収益源に(電池など)成長分野に投資を振り向ける」(安藤孝夫三洋化成社長)方針。新型電池で市場をリードするには巨額の先行投資や安定供給先が必要であり、事業を継続していく上でも企業規模の拡大はプラスに働くとみている。要素技術の融合、販路開拓での連携など、さまざまなシナジーも期待できる。 <関連記事>

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